本研究は,既存のエアフローウィンドウをベースに,熱的性能の向上による省エネと室内熱環境改善の機能強化に加え,窓システム自体で熱交換換気が可能な新しい機能をもつ新しい高性能窓「熱交換型エアフローウィンドウ」(以下,H-AFW)を開発することを目的とする。そのために,本学所有の人工気候室を用いたH-AFWの熱的性能に関する基礎実験及び野外実験を通して,H-AFWの熱的特性・機構を明らかにし,熱的性能評価法の確立並びにその最適制御・設計法を提案したものである。 (1)改良型H-AFWの性能試験と熱的性能の改善方法の検討:前年度の研究結果を受けて,改良型H-AFWを作成し,その改善効果を調べるために人工気候室を用いた熱的性能及びエネルギー性能評価実験を行い,性能検証を行った。その結果,改良型H-AFWは通常の単層ガラス窓に比べ,65%のエネルギー削減効果があることが分かった。また,通気層厚や通気モードの異なるH-AFWのエネルギー性能試験も行い,dual flowモードで最も高い性能が得られた。 (2)VIPによる通気層内部の気流の可視化手法の改良:前年度で開発したH-AFW内通気層の気流性状を詳細に調べるためのVIP解析手法の改善とその性能を明らかにするための実験を行い,鮮明で詳細な可視化情報を得る手法を開発した。その結果は,国内学会及びIndoor Air国際会議で発表もしくは発表を予定している。 (3)総合的な熱的性能評価法及び最適制御・設計法の開発:これまでに得られた実験データと理論的なヒートバランスを基にH-AFWの工学モデルの開発を行い,ペリメータゾーンにおける居住者の心拍や脳波などの生理的反応を調べ,H-AFWの熱的快適性への影響を明らかにした。その結果は,Healthy Building 2015の国際会議で発表した。また,熱回路網計算及びCFDシミュレーションにより,換気による熱移動を伴うH-AFWの総合的な熱的性能評価法を提案し,それを検証した。
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