研究課題/領域番号 |
26630263
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原田 和典 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90198911)
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研究分担者 |
西山 峰広 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50183900)
山崎 雅弘 岡山理科大学, 工学部, 教授 (60240826)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高強度コンクリート / 爆裂 / 繊維 / 空隙圧力 / 熱応力 / 乾燥収縮 / 水分 |
研究実績の概要 |
爆裂発生に関与するコンクリートの物性値に関しては、細孔径分布等の測定結果や既往の文献調査結果を集約して、圧縮強度の依存性を考慮して推定する式を作成した。そのうちポリプロピレン繊維混入の効果については、平成26年度に測定した細孔径分布から氏家らの推定式を拡張して比透気率への影響を推定した。使用したPP繊維の直径は20ミクロンであり、比透気率はひび割れの影響を除外して繊維溶融の効果のみを調べるために細孔径分布から推算した。細孔径分布の測定結果によると、常温から摂氏400度までの温度範囲では空隙率は加熱温度と共にほぼ直線的に増加する。比透気率は、温度が高くなると増加し、400℃では常温時の4.2~4.8倍となった。しかし、繊維混入の有無による差は殆ど無く、溶融や焼失により比透気率が増加すると考える既往の説には疑問が生じることを示した。 熱水分同時移動解析モデルに関しては、平成26年度に問題が生じていた点を改善し、数値解析方法を進捗させた。これを用いて繊維混入がないコンクリートについて、種々の圧縮強度、初期含水率のコンクリートに対して熱水分移動解析および熱応力解析を行った。その結果、圧縮強度100MPa以上、初期空隙飽和度95%以上のコンクリートでは表層部における空隙圧力上昇が引張強度を越えるので、水蒸気圧そのもので爆裂が生じる可能性があること、表面の圧縮破壊および内部ひび割れで生じた破片の座屈機構から推定される破壊応力と解析で生じた熱応力を比較したところ爆裂発生の下限とは一致しないことを示した。 骨組み中のコンクリートの応力状態と爆裂やひび割れとの関係を考察するため、柱梁不静定骨組に対する耐火試験結果について,その挙動を有限要素解析によって追跡した。また、意図的に作成したひび割れを有するモルタル試験体の加熱試験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱水分解析モデルについては、熱伝導と水分移動を連立させた解析モデルの検証のためプログラムのチェックが完了し、解析可能な環境を整えることができた。熱応力解析プログラムについても同様の状態である。繊維混入に伴う物性の変化については、文献調査が一応の完成をみたので、感度解析等を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
解析プログラムの改良については、ひとまず完了とするが、爆裂のメカニズムそのものについては決定的なものはまだ見つかっていない。本年度の検討では、単純な熱応力のみの解析ではメカニズムの説明に至らないので、乾燥収縮ひずみの導入を研究項目に追加すべく準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
加熱時の空隙圧力測定について、研究を進めてきた段階で重要度が下がり、解析で可能性のあるメカニズムを探す作業を行ってきたため。
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次年度使用額の使用計画 |
乾燥収縮の影響を検討する必要が生じてきたので、加熱時の空隙圧力測定に替えて乾燥収縮測定をおこなうべく計画としている。
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