研究課題/領域番号 |
26630265
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
岩田 利枝 東海大学, 工学部, 教授 (80270627)
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研究分担者 |
鈴木 広隆 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60286630)
伊藤 大輔 ものつくり大学, 技能工芸学部, 講師 (10567978)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 建築光環境 / 昼光装置 / 省エネルギー / 気象データ / 直射日光 / 心理評価 |
研究実績の概要 |
1.昼光装置の分類と必要な指標の抽出:現在市販されている昼光装置がもつ特徴を省エネルギー性能、視環境性能に関してまとめ、評価項目として示した。その中から必要とされる指標を確認した。 2.気象条件から標準条件の抽出:窓面方位ごとにプロファイル角の出現頻度を抽出し、夏季,中間季,冬季に分けた季節ごとに頻度が高いプロファイル角の直射日光照度と天空光照度の出現頻度を示した。 3.昼光装置の配光測定:直射日光を模した平行光源を用いて、窓装置としてLow-Eペアガラス2種類、ベネチアンブラインド2種類を対象として配光測定を行った。測定で得た配光曲線から、人工照明の照明率の計算方法に基づき窓面条件ごとに昼光照明率を求め、性能の違いを示した。 4.昼光装置の配光計算:放光部からの配光を明らかにするため、正反射光線追跡法のシミュレーションツールと光束伝達法のシミュレーションツールを連動させる機能を設けた上、窓装置で正反射・拡散反射された反射光を近似多面体要素で受けて配光を求める機能を付加した。昼光照明率の算出の前段階として、膨大な情報量となる上記の配光の計算結果を整理するため、無限大多角柱を用いて光の流れを平面内の方向に集約することを試み、シミュレーションツールにこのための機能を付加した。 5.昼光装置の相当発光効率:日射侵入率測定装置と可視光透過率測定装置を用いて昼光装置の相当発光効率の屋外測定を行った。窓条件は普通複層ガラス、Low-Eペアガラス、普通複層ガラス+ベネチアンブラインド、普通複層ガラス+すだれの計4条件とした。条件ごとに入射角が小さい時の昼光装置の相当発光効率を算出した。また、日射侵入率と可視光透過率についてはメーカーのカタログ値と比較し、いずれも妥当な値であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
建築物における環境配慮手法として昼光利用が推奨され、昼光装置(窓装置を含む)の開発も盛んに行われているが、さまざまな昼光装置に対し、多様な評価項目があり、その上、屋外条件によって指標値そのものが変化することから、効果の予測は簡単ではない。本研究は、昼光装置の選択・設計支援を目的として、電気照明の発光効率や照明率などに相当するようなわかりやすい指標を、気象条件の変動に対応できる形に大胆に体系的に整備することを目的としている。 26年度は1.昼光装置の分類と必要な指標の抽出、2.気象条件から標準条件の抽出、3.昼光装置の配光測定、4.昼光装置の配光計算までを目標にしていたが、研究実績にあげたように27年度計画の相当発光効率まで着手することができた。相当発光効率の部分では当初の計画以上に進展している。 しかし一方、昼光装置の配光測定では、平行光線の光量が足りないという問題があり、予定していたすべての昼光装置の測定で十分なデータを得られていない。27年度も引き続き測定を行う予定である。 よって総合的に「②おおむね順調に進展している」という評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
挑戦的萌芽研究として、昼光装置の選択・設計支援に役立つように指標群全体を網羅する形で研究を行う。実際の指標作成における問題点の抽出など基本的部分に力を入れる。個々の指標については以下のように進めていく。 昼光装置の配光測定については26年度に引き続き、平行光線を用いた実験と天空光を用いた実験、実際の昼光を用いた測定を行う。一連のシミュレーション関係の検討については、26年度はシミュレーション実現のためのシステム拡張に留まったため、27年度は流れを平面内の方向に集約したことで得られる知見や模型実験との整合性等について検討を行う。 昼光装置の相当発光効率については26年度に引き続き夏季にも同様の実験を行い、直射日光の入射角の影響について確認する。 標準気象条件を考慮して不快グレア抑制率を求める。在室者の目の位置での放光部の輝度と立体角からPGSVを算出する。配光曲線から求めた利用光束と不快グレアのバランスを考え、正規化した値を不快グレア抑制率とする。 分光分布については光ダクト、光ファイバー利用型採光装置を対象に導光距離、導光量を考慮した基礎的実測・実験を行い、分光分布維持率として評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、研究代表者の岩田と研究分担者の伊藤の物品費の使用額が予定より減ったことによる。この理由としては、他の予算がついたなどの事情により科研費によって購入する必要がなくなったことが挙げられ、研究計画自体に変更が生じたわけではない。具体的には、岩田には所属機関東海大学総合研究機構の平成26年度松前重義記念基金特別研究奨励金が配分され、物品費として計上していた解析用のノートパソコンをこの予算から購入している。また、伊藤は所属機関のものつくり大学が文部科学省の平成26年度私立大学等教育研究活性化設備整備事業補助金により気象観測ステーションを設置したため、直達日射、天空日射、直射日光照度、全天空照度の測定が可能となり、予定していたシャドウバンドを購入する必要がなくなっている。 これらの別予算の獲得は予想しがたいものだったので、次年度使用額が生じたが、研究は当初の計画の通りに行っている。
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次年度使用額の使用計画 |
発生した次年度使用額は、研究代表者の岩田は実験・シミュレーションのデータ解析の人件費として計上する。これは最終年度の研究成果のまとめなどを充実させるのに必要なものと考えた。研究分担者の伊藤は上述の大学に設置された気象観測ステーションにより常時連続測定が可能となったので、本研究で用いる気象データ解析用のノートPCを購入する予定である。27年度分として請求した助成金は、研究代表者、分担者とも当初の予定通り外国旅費(国際照明委員会28回大会、イギリス・マンチェスター開催)と消耗品にあてる。
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