研究実績の概要 |
随伴変数法を用いた逆解析をCFD解析に適用することで、比較的短時間の中で、現状の設計案の物理面での性能を向上させることが可能であると考えられる。本研究では、設計における随伴変数法を用いた逆解析の効果的な適用方法について開拓し、新たな設計手法として提案することを目的として、以下の4点につき検討した。 (1) 建物形状の最適変形システムの構築 本検討では翼形状の最適化の概念を建築の設計に応用して、環境性能の面から建物の全体形状を半自動的に最適化するシステムの開発を目的とする。形状変形には、CADツール(RhinocerosおよびGrasshopper)とCFD・逆解析ツール(FlowDesinger10)を使用することで、CFDとCADを連携した建物形状の半自動的最適変形システムのプロトタイプを構築した。 (2) 通風性能向上を目的とした建物形状の最適化 (1)で構築した最適設計システムを用いて、建物間の道路空間の通風性能向上を目的とした形状最適化について、特に壁面変形の再現性を考慮して格子数3,000万(構造格子)とした解析を実施した。同じ変形量でも逆解析を利用して変形したモデルの建物間風速の方が高くなり、提案手法の有効性を確認できた。 (3) 通風性能向上を目的とした空堀形状の最適化 通風性能向上を目的とした空堀形状の最適化を行い、逆解析の有効性について検証した。構造格子を使用する為に斜面が階段形状となるが故の影響により、一部、変形前後で評価領域内風速が低下したものと見られる結果もあるが、一定の有効性が見られた。 (4) 歩行域における強風低減を目的とした建物形状の最適化 高層建物のビル風低減について、逆解析による隅切り箇所を決定する手法を提案し、検討を行った。ネスティング使用時におけるCFD解析の収束の方向について課題が残るが、形状最適化としては一定の有効性を確認した。
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