東日本大震災における各種の復興関連事業により、被災地の社会的・経済的・空間的な構造は大きく変容していく。過酷な環境移行による被災者の精神的・身体的負担を和らげるべく、新たなコミュニティの拠り所となるべき場所を涵養することは、被災地が求めている喫緊の支援課題であり、被災者の生活の質の向上を第一とする建築計画学が担うべき学術的使命である。本研究は、A.東日本大震災以前の災害にみるコミュニティカフェ類施設の歴史的再考、B.東北被災地におけるコミュニティカフェの俯瞰的・体系的整理と比較分析を踏まえ、C.再編拠点を目指すコミュニティカフェのアクションリサーチと設計方法の実地検証を通じて、災害後に再構築される地域社会の礎となるコミュニティカフェの計画手法とその理論の萌芽的知見を得ることを目指す。 2年間の実施計画として、以下の3段階で研究を遂行する。平成27年度は主として(2)および(3)に取り組んだ。 (1)東日本大震災以前の災害におけるコミュニティカフェに類する施設等の成立の実態と過程について総合的に評価・分析し、歴史的にレビューを行う。(2)東北被災地のコミュニティカフェについて、成立経緯や成果・課題、現状の被災者の生活との関係、地域再編の中での位置づけについて詳細な情報収集を行い、各事例の特徴を比較分析しながら、俯瞰的・体系的な整理を行う。(3) (1)(2)を踏まえ、大船渡市末崎地区での地域再編拠点を目指している「居場所ハウス」のアクションリサーチを通じて、その建築設計方法の効果や課題を経年的に検証し、災害後に再構築される地域社会の礎となるコミュニティカフェの計画手法とその理論の萌芽的知見を得る。
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