研究課題/領域番号 |
26630269
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
瀬戸口 剛 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20226674)
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研究分担者 |
松村 博文 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, 研究部長 (90462324)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コンパクトシティ / 市街地集約化 / 空き家 / 公共施設集約化 / 維持管理コスト / 事業評価 / 夕張市真谷地地区 / 人口減少都市 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人口激減および少子高齢化が著しい地方都市において、空き家を活用して市街地の集約化を図り、縮小型のコンパクトシティを形成する手法を構築することにある。本研究では、わが国初の市街地集約化事業を行った夕張市真谷地地区を事例として、維持管理の効率化と、生活環境の維持・改善を視点に事業評価を行うことで、その効果とそれに基づく市街地集約化の方法論を明らかにする。平成26年度研究より得られた、市街地集約化の方法論を以下に示す。 ①住棟集約や浄化槽の削減など、財政負担低減の効果が出るように集約化計画の方針を決定し、完遂する。②集約化計画のシナリオについて、段階的に事業の効果を把握し、事業効果のあるレベルまで遂行する。③住替え世帯の意向を把握し、計画の方針から外れない範囲で、家賃の据置きや給排水管取替など、生活環境の維持・改善を行う。④非住替え世帯に対しても、住戸内の手摺設置や内窓改修など、生活環境の改善を行う。⑤住民全体に対し、共用階段の手摺設置や住棟の断熱改修など、共用空間にも生活環境の改善を行う。⑥住民全体の総論賛成を得るため、共同浴場の維持継続やバリアフリー化など、地域のコミュニティの場を維持・改善する。⑦住替え世帯の個別の要望を聞き、友人と住替えたい、風呂付き住戸に住替えたいなどの意向に対応する。⑧集約化事業を短期間で完了させることで、時間経過に伴う財政負担を低減させ、より高い効果を得られる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道夕張市真谷地地区を対象とした、市街地集約化事業が進展しており、その事業評価を行っている本研究も、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26度の研究成果を受けて、平成27年度は以下の調査研究を進める。 ①市街地集約化による公共施設の維持管理コストの把握:公共施設の維持管理コストを、それぞれの集約化の対象となる市街地において明らかにする。公共施設にはインフラとなる道路や上下水道、行政施設や学校、コミュニティ施設などの公共建築があげられる。ここで北海道においては、公共施設の維持管理コストにおける除雪費の割合が非常に高いため、除雪費の把握は重要である。 ②市街地集約化に対する居住者意識の把握:市街地の集約化に対する居住者の意識を明らかにする。具体的には、移転の意思、移転を決意するための条件、移転先に求める居住環境、移転先として希望する場所などについて、居住者のアンケートから明らかにする。アンケートは自治体と協力して直接配布回収とするが、アンケート回答者の個人が特定できないようにする。 ③公共施設の維持管理コストの縮減効果の検討:対象都市において、2030年の人口構成予測および公共施設の維持管理コストの状況、居住者の集約化に対する意識から、公共施設の維持管理コストの縮減効果を明らかにする。人口の将来予測及び住民の居住地選好から、居住地と公共施設の再編モデルを構築し、再編前後を比較とした公共施設の維持管理・修繕費の縮減効果を算出する。これらは、市街地集約化を検討する条件設定ともなり得る。 ④市街地集約化のパターンの検討と評価:市街地集約化に対する、3つのパターンを提示する。市街地で集約化を図る「市街地内集約型」、地区間の住み替えにより移転集約する「中心市街地集約型」、集約化を図らない場合に自然に地区が衰退して結果的に集約化が進む「市街地衰退集約型」である。これらは縮小型コンパクトシティを形成する将来イメージとして、形成手法を構築する前提となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
公営住宅の空き家を含めた、市街地集約化による公共施設の維持管理コストの検討を、次年度に行うこととしたために、関連して、調査のための人件費や、GISソフト購入費などを、次年度使用額としたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、おもに、夕張市をはじめとする対象都市での、調査旅費、調査補助人件費、データベース整備費などに使用する。
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