研究課題/領域番号 |
26630273
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
平山 洋介 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70212173)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 住宅市場 / 住宅金融 / 住宅供給 / 住宅政策 / グローバリゼーション / 新自由主義 / 世界金融危機 / ポスト・クライシス |
研究実績の概要 |
先進諸国の多くは、1980年代から、市場重視の住宅供給システムをつくってきた。この枠組みのなかで、持家セクターが拡大し、社会賃貸セクター向けの政策支援は縮小した。しかし、サブプライム・ローン破綻、リーマンショック、ユーロ危機など、2000年代末から続くグローバルな金融・経済危機によって、持家取得の推進は困難になった。その結果、住宅に関する公共政策の見直しが進み、ポスト・クライシスの住宅供給システムをどのように組み立てるのか、という問題の重要性が高まった。一方、日本では、市場重視の住宅供給が1990年代半ばから続き、その今後の展開をどのように設計するのかという検討課題がある。 本研究は、ポスト・クライシスの住宅供給に関する国際比較分析を進め、日本の位置と特徴をとらえようとするものである。この目的に沿って、ポスト・クライシス時代に入ってからの国際住宅学界における主要論文を検討し、その結果、従来のタイポロジーを中心とする研究潮流が後退し、代わって、資本主義社会に共通する歴史変化をみいだし、理論化しようとする試みが主流となったことを把握した。これまでは、アングロサクソン、北欧・西欧、南欧、東アジアなど、それぞれの地域での住宅供給システムの特徴についての議論が中心であったのに対し、多くの地域を飲み込むより大きな時代変化に研究関心が移ったといえる。さらに、本研究では、研究潮流変化の文脈のなかで、日本の位置づけを考察し、欧米に先んじてバブル破綻を経験した日本は、長いデフレーションによる住宅市場の衰退という傾向を示し、ポストクライシスの住宅条件の一端を示している点で、重要な「先進事例」になる可能性があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献調査にもとづき、理論検討を行う点に関し、研究は順調に進展した。しかし、統計・データ収集などに関し、現地調査などを実施する時間をとれず、この点で、若干の遅れが生じている。その理由は、所属部局の大がかりな再編(他部局との合併)が進んでおり、役職に就いていることから、会議・書類作成等に膨大な時間をとられたことである。
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今後の研究の推進方策 |
所属部局の再編に関する作業はおおむね目途がついたことから、時間確保は昨年度よりも可能になる。また、研究補助者を雇用し、調査を手伝ってもらうことを計画している。研究内容については、「経路依存」と「グローバルインパクト」の組み合わせから住宅供給システムの変化を理論化するという当初のアイデアをさらに洗練させ、それを実証調査と組み合わせ、有益な成果をあげる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
すでに述べたように、所属部局の再編業務に予定外の膨大な時間をとられ、資料・データ収集に関する調査が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度より時間確保の見通しがついたため、調査を進め、さらに研究補助者を雇用し、調査・各種作業の速度を上げる予定である。
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