最終年度にあたり、成果をまとめ、それを研究者・一般を含め、公開することを主たる目標として作業をおこなった。またイギリスにおいて行われている実験考古学的なアングロサクソンの遺跡や遺跡の上に直接復元したローマ遺跡の調査をおこない、日欧の比較についても検討した。また昨年度から継続している復元された遺跡とその根拠に関するデータベース化の基礎作業を行った。 まずは、学術的な成果の概略をまとめた成果として、2016年6月に平城宮跡資料館にて、第118回公開講演会のなかで、『復元を学問する ー「復元学」の誕生と未来ー』と題した発表をおこなった。考証学からの視点と建築学のなかにおける復元の差異を紹介した。文献史学を中心とする多分野の研究者から、視点に対する一定の評価を得た。また2017年2月には書籍『古建築を復元する―過去と現在の架け橋―』歴史文化ライブラリー444(単著、吉川弘文館)を刊行し、復元学の基礎的な研究成果をまとめるとともに、若手Aの研究成果と連携し、さらなる研究の成果を得ることができた。同じく、読売新聞において連載されている探検奈文研のなかで、「復元」と「復原」の語の使用方法の違いについて、一般向けに分かりやすく解説をおこなった。 なお、本科学研究費の研究の成果に加え、さらなる研究成果をまとめた研究書の刊行に向け、庭園史研究者、整備に関わっている自治体職員などの協力を依頼しつつ、計画を進行させている。これは本科学研究費の目的である「復元学の構築」に向けた大きな一歩である。
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