研究実績の概要 |
擬二次元系層状化合物、MnAlGe、およびMnGaGeはCu2Sb型の異方的な結晶構造に由来し、非常に高い結晶磁気異方性定数を示すことが知られている。本研究では、このMnAlGeやMnGaGe等の結晶磁気異方性の起源を探るとともに、薄膜試料作製時において、配向や格子定数を制御して更に高い磁気異方性やキュリー温度を有する磁気記録媒体向け、およびスピントロニクス向け磁性材料の開発を目的としている。 最終年度である平成27年度は、格子定数、もしくはMnより構成される面間距離とキュリー温度(TC)の関連性を明らかにする目的で、「MnAlGe 系化合物のSiおよびSn置換効果が及ぼす磁気特性変化」の研究課題に取り組んだ。高周波溶解にてMnAl(Ge1-xSix)およびMnAl(Ge1-ySny)の多結晶合金を作製し、均一化熱処理を施して試料を得た。組織観察、X線回折測定から相状態や結晶構造を調べた。MnAl(Ge1-xSix)についてはX線回折測定より、x = 0.4まではSiが置換でき、単位胞あたりの磁気モーメントの値は、一旦上昇傾向を示すもののSi濃度がさらに高くなると減少した。一方、TCはSi濃度の増加に伴い単調に低下した。MnAl(Ge1-ySny)において、逆に格子が膨張した際の磁気特性の変化を調べたかったが、Sn元素はわずかの量でも置換できなかった。単相の得られたMnAl(Ge1-xSix)に関して、前年度調べた、MnAlGeのCr, Fe置換を行った際の結果と比較・検討をおこなったところ、c軸の長さが短くなるにつれてTCが低下する様相は同じであった。しかしながら、格子定数の変化率に対するTC変化の振舞は大きく異なり、単純にc軸長(=面間距離)の長さだけで統一的にTCの大きさを説明することは出来なかった。つまり、面間距離だけでなく、Mn自体の磁気モーメントの変化、それに加えてMn-Mn原子間に働く交換相互作用の強さもTCに影響を及ぼしていると言え、今後はそれらの因子も踏まえて磁気特性を包括的に議論する必要があると思われる。
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