研究課題
最終年度は前年度に引き続き、ワイドギャップ半導体についての評価を続けるとともに、各材料におけるキャリア密度の測定可能範囲について調査、検討を行った。ワイドバンドギャップ半導体としては、SiをドーピングしたGa2O3を選択した。様々な濃度のSiが添加されたターゲットを用いてPLD法によって作製されたGa2O3薄膜について、KFM法により表面電位を測定した。ホール測定により試料のキャリアは電子であり(n型)その密度は10の15乗cm-3から10の20乗cm-3の広範囲にわたっていることが確認された。KFM法によって観察されたn型半導体である試料の仕事関数は、キャリア密度の上昇に伴い上昇する傾向が見られた。このことは、前年度までに調査したSiのn型高濃度領域における挙動と類似しており、表面準位によるフェルミレベルピニングとバンドベンディングを考慮したモデルを用いることで説明されることが示された。計画時に測定対象として想定していたSiCについては、広範囲のキャリア密度とキャリア種の試料を系統的に調査するには至らなかったが、キャリア密度の違いによる表面電位の差異とSi面、C面における電位の違いもKFMにより観察されることが示唆された。キャリア密度の測定可能範囲については、低ドーピング濃度領域においては真性キャリア密度から10の15乗cm-3程度までの範囲であれば、KFM法によりキャリア種とキャリア密度を同時に、また直接的に知ることが可能と考えられる。一方、高ドーピング濃度領域においては、表面準位によるフェルミレベルピニングの影響によりバルクフェルミレベルの変化とは異なった仕事関数が観察されるが、材料によってはこの挙動を把握したうえで解析を行うことで、10の20乗cm-3程度の高濃度領域までKFM法により評価を行うことも期待できる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Applied Physics Letters
巻: 109 ページ: 102105_1-5
10.1063/1.4962463