Al-Y-Ni-Co-Fe-Pd系の多成分アモルファス合金においては、全溶質元素量が約13原子%以下では、アモルファス相はガラス遷移現象を示さす、最初にfcc-Al相が約20nm直径で球形状物として析出し、より高温域で残りのアモルファス相からfcc-Al+Al基金属間化合物が共晶的反応により析出して結晶化を終える。溶質元素量が13―15原子%域では、加熱により、ガラス遷移を示した後、過冷却液体からAl 相がデンドライト形態で約30-50nmの比較的に大きな粒径で析出した後に、残りのアモルファス相域からAl + 化合物が共晶反応的に析出して結晶化を終了する。溶質元素量が16原子%にさらに増大すると、結晶化反応は、ガラス遷移、次いで過冷却液体域からAl + 化合物+ アモルファスが析出した後、再びAl + アモルファス相に変化することを見出した。このように、Al + アモルファス相が高温の広い温度域で形成し、16原子%の高溶質元素量Al合金においても、Al + アモルファス相からなら高温域で大きな塑性加工性を得ることが可能であり、材料工学的視点においても重要な意味を有している。 さらに、上記した16原子%Alガラス合金において、Al + 化合物+アモルファスの混在相から、より高温域でAl + アモルファスとなる、すなわち、化合物がアモルファス+Alへの包晶反応的に逆変態することが見出された。これはアモルファス合金分野では初めての研究結果であり、その新現象が起きる原因を組織学的ならびに自由エネルギー的視点より検討、考察して、Nature出版社から論文として公表している。
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