本研究では、反強磁性秩序と強磁性秩序が拮抗した磁性体に焦点を当て、これらの磁気秩序および磁気相転移(反強磁性-強磁性メタ磁性転移)を格子・電荷変調により制御するための物理機構を解明し、その電界制御の実証までを目的とする。 上記目的を達成するためにH27年度は、FeRh/強誘電体BaTiO3へテロ構造において電界を印加することで生じるBaTiO3の強誘電a-ドメインからc-ドメインへのドメイン配向スイッチングに起因する界面圧縮歪みがFeRhの磁気秩序に与える影響を調査した。具体的には、FeRhの強磁性状態において、電界を薄膜面直に印加することで圧縮歪みを誘起し、薄膜面内方向に対する保磁力の電界依存性を測定した。その結果、電界を0.5 kV/cm印加することで保磁力が50%以上減少することを見出した。この保磁力の減少は、BaTiO3のa-cドメインスイッチングに伴う1%の界面圧縮歪みと関連づけられ、FeRh規則合金が強磁性状態から反強磁性状態に構造相転移する際に格子収縮を伴うことと定性的に一致している。また、BaTiO3がtetragonal相からorthorhombic相、rhombohedral相へと構造相転移する温度においても磁化の急激な減少が観測され、構造相転移に伴い界面圧縮歪みがFeRhに誘起されることで反強磁性状態が安定化した結果として理解される。以上により、反強磁性秩序と強磁性秩序が拮抗したFeRh規則合金において、電界により磁気秩序を制御することに成功したと言える。また、本成果によりMMM/Internmag 2016 Joint ConferenceではBest Poster Awardを受賞してる。
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