研究実績の概要 |
昨年度、本研究課題では、パルスレーザー堆積法(PLD法)によるin-situでのZrCuSiAs型化合物のエピタキシャル薄膜成長条件のキーパラメータを見いだすことが目標であったが困難であった。そこで、有効なex-situ法の開発を視野に入れ、同じ鉄系超伝導体のなかでも合成が特に困難なKFe2As2薄膜の合成に有効なex-situ法の開発を通じて、in-situパルスレーザー堆積法によるZrCuSiAs型化合物のエピタキシャル薄膜成長条件のヒントを得ることを試みたところ、PLDを用いた薄膜堆積、追加熱処理を併用して試料を大気中に出さずにKFe2As2薄膜の作製を行った。しかしながら、Kの高い蒸気圧に起因して、基板加熱を行うと基板上でKが再蒸発し、組成をコントロールすることができなかった。すなわち、AEFe2As2(AE=Ba,Sr)で用いられる基板加熱を伴うPLD法はKFe2As2の系には適さないことが分かった。そこで、新しい手法の開発に着手し、ガラスとの反応性が比較的低いKFe2As2の粉で膜全体を覆い、アニールを試みた。これにより組成を変えずにかつ、高温での熱処理による結晶化を可能にした。その結果、c軸方向に強く配向し、面内4回対称を持つエピタキシャル薄膜の作製に成功した。 この知見から、in-situでのZrCuSiAs型化合物SmFeAsOの合成条件の模索とex-situによる効果的なキャリアドープ法の開発に取り組み、薄膜成長条件を詳細に最適化することによって目標を達成した。現在、論文投稿を行うために原稿を作成中である。
|