研究課題/領域番号 |
26630306
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉本 護 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (20174998)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | セラミックス / 酸化ガリウム / 薄膜成長 / 単結晶性薄膜 / ワイドギャップ半導体 |
研究実績の概要 |
本研究では、GaNやZnOよりも大きくダイヤモンド並みのワイドなバンドギャップ(5eV)を有し、紫外発光や大電流パワー素子として有望視されるGa2O3の単結晶薄膜を、原子レベルで表面制御した基板上に、パルスレーザーアブレ-ションを使ったレーザー励起気相プロセスあるいは、紫外線レーザー照射アニールなどにより、室温付近(約20℃)の低温において作製し、高温成長した従来のGa2O3薄膜とは違った非平衡構造(α、β型ほか)の出現や発光特性(直接遷移か間接遷移かなど)、および不純物ドーピング挙動(pn制御やキャリア注入量)などを調べることを目的として研究遂行した。その結果、本年度研究では、下記成果を得ることができた。 (1)原子ステップを持つサファイアC面基板上でのNiO緩衝層を利用したPLD成膜法により、300℃以下での低温エピタキシャル薄膜の成長を達成した。具体的には、パルスレーザー蒸着(PLD)を主体とする成膜装置を使い、原子ステップを持つサファイアC面基板上に、格子ミスマッチの緩和を狙ってNiO極薄膜を緩衝層として最初に堆積し、次にGa2O3 焼結体を固体ターゲットとしてGa2O3の単結晶性(エピタキシャル)薄膜の合成を試み、300℃でエピタキシャル薄膜を得ることができた。 (2)従来にない300℃という低温で得られたGa2O3エピタキシャル薄膜の結晶構造をX線回折装置で詳細に調べ、β型結晶膜であることを見出した。 (3)低温で得られたGa2O3薄膜の紫外可視光吸収特性(バンドギャップ測定)を調べ、バルクとほぼ同じバンドギャップ=4.9eVが観測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、GaNやZnOよりも大きくダイヤモンド並みのワイドなバンドギャップ(5eV)を有し、紫外発光や大電流パワー素子として有望視されるGa2O3の単結晶薄膜を、原子レベルで表面制御した基板上に、パルスレーザーアブレ-ションを使ったレーザー励起気相プロセスあるいは、紫外線レーザー照射アニールなどにより、室温付近(約20℃)の低温において作製し、高温成長した従来のGa2O3薄膜とは違った非平衡構造(α、β型ほか)の出現や発光特性(直接遷移か間接遷移かなど)、および不純物ドーピング挙動(pn制御やキャリア注入量)などを調べることであるが、本年度の研究では、従来500℃以上の高温を必要としていたエピタキシャル薄膜成長温度を、緩衝層導入による独自の成膜プロセスの開発により、300℃という従来にない低温でエピタキシャル成長を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に得られた成果をベースにして、平成27年度では、主に、紫外線レーザーの照射による低温での固相結晶化を促進することで、室温付近でのエピタキシャル薄膜合成プロセスの確立に挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
同一キャンパス内の新設高層棟ビルへの研究室全面移転が、2012年度から2013年度に渡って行われ、そのための実験装置等の移動や再立ち上げに2014年度もかなりの時間が取られた。これら移転業務に伴う実験の遅れが、当該事象の主因です。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、実験遂行を積極的に推し進め、研究加速のための消耗品等の支出にその大半を充当するとともに、当該成果を、国内および海外での学会で発表するための旅費等に使用する予定である。
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