「室温でのGa2O3単結晶性薄膜の作製と新規なワイドギャップ酸化物半導体の創製」と題した本研究では、GaNやZnOよりも大きくダイヤモンド並みのワイドバンドギャップ(約5eV)を有し、紫外発光や大電流パワー素子として有望視されるGa2O3単結晶薄膜において、原子レベルで表面制御した原子ステップサファイア単結晶基板上に、レーザーアニールなどの光励起プロセスを駆使して、室温でGa2O3単結晶薄膜成長を達成し、さらに、低温プロセスを利用して、電気特性制御のための不純物ドープした超平坦表界面を持つ新規ワイドギャップ酸化物を創成することを目標とした。 これまでの研究により、基板上にNiO緩衝層を導入した非晶質Ga2O3積層膜系において、紫外エキシマレーザーアニーリングを適用することで、エピタキシャルβ-Ga2O3薄膜の固相室温成長に成功した。発光特性評価から、得られた室温成長β-Ga2O3薄膜の発光吸収特性は高温成膜したものと比較して同等以上の性能を有することが確認された。また、表面は基板の原子ステップを反映した超平坦な形状を示すことが見出された。 また、エキシマレーザーアニールプロセスにおいて、NiO緩衝層付きサファイア基板上に堆積した非晶質Ga2O3薄膜の表面からレーザー照射する場合と、基板裏面からレーザー照射する場合の固相結晶化に関する結果の違いを検討したところ、基板裏面からのレーザー照射の方が、結晶性が向上していることを見出した。また、比較的大きな膜厚の固相結晶化には、裏面照射の方が有利であることがわかった。これらの原因として、裏面照射の場合の方が、NiO緩衝層界面でのGa2O3結晶核形成が優先的に起こることが推察された。
|