多孔質ガラスを様々なシランカップリング剤により撥水化し、種々のオイルに対する界面エネルギーを測定した。得られた界面エネルギーから拡張係数を計算することにより、固体表面が水滴と直接接触するものと、オイルが表面に濡れ広がることで水滴と直接接触しない試料を作製した。この上で接触角・転落角を評価し、静的濡れ性が同程度であると確認された試料間で転落速度を比較したところ、固体と水滴の直接接触がある試料では転落速度が低下していた。これらのSLBC間には固体表面の粗さ構造の差異はなく、この結果は、固体表面処理がSLBCの動的撥水性に影響を与えることが示唆された。 さらに、水滴にグリセリンを添加して粘度を変更した際の、SLBC上での転落をその内部流動評価により検討した。水にグリセリンを添加して粘度を変更したところ、グリセリン添加量の増大に伴い粘度が増大し、転落速度は減少していくことがわかった。この減少傾向は同一のシランで撥水処理した平滑Si基板よりも緩やかであり、粘度の高い液滴でもSLBCは固体基板よりも高い転落性を示した。この際、SLBC上の液滴は、低粘度領域では滑りモードで転落する一方、粘度の上昇に伴い回転成分速度が増加していくことが明らかになった。このことは、SLBC上を転落する液滴の挙動は液滴とオイルの粘性の大小関係に影響を受けることが考えられ、粘性散逸エネルギーの計算により液滴とオイルの粘性散逸エネルギーの大小によりその支配因子の評価を行った。
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