TCの低いチタン酸バリウム(BT、TC =130℃)層をTCの高いニオブ酸カリウム(KN、TC =430℃)層で上下で挟み込んだ3層複合構造を構築し、この試料全体を分極処理することでBTのTCである130℃以上になっても上下で挟み込んでいるKN層の残留電気分極により10kV/cm以上の内部電場を導入でき、その結果試料全体のTCの向上が可能となる機構の実現を目指した。まずBTナノ粒子(300nm)と酸化ニオブ(Nb2O5)粒子の混合粉を有機溶媒と分散剤を用いてスラリーにし、ドクターブレード法を用いてセラミックスシートを作製した。次にKNナノ粒子(300nm)とNb2O5粒子の混合粉を有機溶媒と分散剤を用いてスラリーにし、同様にセラミックスシートを作製した。これらを複数枚積層・圧着し、600℃での脱バイ後、エタノール溶媒中でカリウム源を加えソルボサーマル処理によりKN/BT層を上下でKN/KN層で挟み込んだ一体型多孔体セラミックス(相対密度:65~70%)の230℃以下での低温合成に成功した。このような熱膨張係数の異なるに種類のセラミックスの複合構造を通常の電気炉を用いた焼結により作製した場合では1000℃以上の高温を必要とし、降温時の熱歪みにより試料は破壊される。また、これらの複合セラミックスを120℃以上の高温で高電場を印加する分極処理を検討した結果、多孔体の部分にシリコーンオイルを含浸させることで分極処理にも成功した。このような多孔体における分極処理技術の確立もまた世界初の技術である。その後、内部電場の導入を確認するため3層構造複合セラミックスにおいて分極処理の有無におけるTCの変化について誘電特性の温度依存性により検討した結果、2℃近いTCの変化を確認できた。これにより目的とする内部電場の導入とそれによるTCの向上を確認することに成功した。
|