【目的】転位は,結晶中の原子配列の連続性が局所的に乱れた線状欠陥であり,溶質元素の偏析,転位に沿った高速拡散(パイプ拡散),バンド構造変化などの現象を引き起こすことが知られている.本研究では,転位の電気伝導特性評価を行うことを目的として,小角粒界を有する酸化物双結晶の作製を行い,転位列に沿った電気伝導特性評価を行う. 【透過型電子顕微鏡法(TEM)による転位構造の観察】LiNbO3の小傾角粒界構造を観察し,転位が2-4個の部分転位に分解した,複雑な転位構造を持つことが分かった.また,ZrO2の小傾角粒界における転位構造観察から,完全転位として導入される場合と2個の部分転位に分解した構造を取る場合の両方が同時に形成されることが分かった. 【マクロな電気伝導測定】LiNbO3の小傾角粒界では傾角が高い粒界を高温還元処理した場合においてのみ,常温で電気伝導性が発現することが分かった.測定結果から,電気伝導は電子によるものであると考えられた.TEM観察と組み合わせることで,傾角が高くなる際に形成される特異な転位構造が電気伝導に寄与していると考えられた.一方で,イオン伝導性は測定範囲以下であった.また,ZrO2の小傾角粒界における測定結果から,200℃以上の温度域にてイオン伝導性を確認することができた.しかしながら,粒界の伝導率がバルクと大差ないことが分かった. 【原子間力顕微鏡(AFM)を用いた局所電気伝導特性の測定】AFMを用いた測定結果から,LiNbO3の小傾角粒界の電気伝導性が粒界の局所に発現していることが確認できた.
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