研究実績の概要 |
本研究は、巨視的に材料ポアソン比が負となるような疑似的なAuxetic (オーセチック)挙動が実現できる不織布を新規合成し、鉛フリー圧電素材であっても驚異的な伸び変形率が達成できる振動発電素子を提案することを目的とした。 初年度は、(Na,K)NbO3(NKN)前駆体繊維からなる不織布組織を形成し、これを柔軟性に優れた樹脂マトリックスと複合化した複合材料化を検討し、ペロブスカイト単相で高キュリー温度をもつセラミック不織布の合成に成功した。ただし、この不織布は高結晶性で柔軟性に欠けていたため、複合材料素材には適さず、発電量の長期持続性にも問題があった。そこで2年目に複合材料組織を一新し、NKNセラミック粒子を有機素材に分散させた圧電不織布の合成、さらにこれらを樹脂シート層で交互積層した振動発電素子の合成に着手し、優れた柔軟性と振動発電特性を得た。特に、不織布繊維間における接点の連結状態の制御によって、擬似オーセチック挙動が望めることが判明し、特定方位の応力負荷状態において最大の耐久性と発電量が両立することを見出した。 そこで最終年度は、高温環境下での振動発電が可能となる素子を得るために材質および組織をさらに改質した。特に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/NKN複合組織からなる不織布発電素子は、150℃においても室温の80%程度の発電量を示しことを実証し、高温の曲面部分にも対応した振動発電素子の開発に成功した。併せて、力学試験、微細構造観察、熱分析の結果、20%の減少分は母材樹脂の軟化によってセラミック分散粒子への応力伝播が損なわれたことが主原因と特定できた。総じて、目的通りに高温環境でも安定駆動が可能な自立電源として利用が期待できる圧電式振動発電素子の研究開発に成功した。そこで、これらの成果を取りまとめて誌上および学会発表を行った。
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