研究課題/領域番号 |
26630316
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大場 史康 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90378795)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 太陽電池材料 / 電子構造 |
研究実績の概要 |
中間バンド型太陽電池は,集光下で63%,非集光下でも47%もの高い理論変換効率を示すことから,次世代の高効率太陽電池として期待されている.しかし,その鍵となる中間バンドを有する光吸収層材料の最適化が十分になされているとは言えず,現状では理論値を遙かに下回る変換効率しか得られていない.本研究では,高精度な第一原理計算に基づいた設計と系統的な探索を行い,高効率な中間バンド型太陽電池の実現に向けた理論予測を目指す. 本年度には,第一原理計算により不純物添加化合物半導体のバンド構造と吸収係数の算出を行うための基盤技術を確立した.精確な理論予測を行うためには,電子構造の高い計算精度が要求される.密度汎関数理論への局所密度近似(LDA)や一般化勾配近似(GGA)を用いた標準的な第一原理計算では,半導体のバンドギャップや不純物準位の再現性が悪いことが知られている.このため,ハイブリッド汎関数や多体摂動論に基づいたGW近似を適用した.ホスト物質の候補としては,バンドギャップが1.4~3.4 eV程度の半導体が理論変換効率の観点から適切である.また既存のセル作製技術との親和性の観点から,閃亜鉛鉱型構造,カルコパイライト型構造の化合物半導体を選択した.これらを対象に系統的な計算を実行し,候補物質を絞り込んだ.さらに,吸収係数を考慮した現実的な理論変換効率の計算手法を開発し,電子構造の観点から選定された物質を対象に変換効率の理論予測を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では不純物添加化合物半導体を対象としていたが,対象物質の選定プロセスを効率化することで,中間バンドを有する多元系化合物の探索まで拡張することができた.また半導体ヘテロ接合の評価に不可欠なバンドアライメントの高精度計算手法の開発が進んだ.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に開発した手法に立脚して,より広範な物質を対象に材料設計・探索へと展開する.様々な既知・仮想的な物質を対象としたデータセットを構築し,これに対して吸収係数の寄与を考慮した現実的な理論変換効率に基づいたスクリーニングを行う.これにより,中間バンド型太陽電池の光吸収層として高いポテンシャルを有する系を見いだす.具体的には以下のとおりである. 1.第一原理計算による不純物添加半導体・化合物半導体のバンド構造と吸収係数の系統的算出 前年度に引き続き,第一原理計算によるバンド構造と吸収係数の系統的な算出を行う.この際,下記「2」によるスクリーニングの結果を随時フィードバックすることで,計算対象とする系を効率的に絞り込みながら算出を進める. 2.スクリーニングによる材料探索 上記「1」により,多様な物質を網羅したデータセットが構築される.これに対して前年度に開発した理論変換効率シミュレーションを適用し,その結果に基づいてスクリーニングを行う.これにより,中間バンド型太陽電池の光吸収層として高いポテンシャルを有する系を見いだすとともにその材料設計指針について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画より計算手法の開発を重視し,また計算プロセスを効率化できたため,コンピュータ導入のための物品費および人件費を減らした.一方,来年度には多数の物質を対象とした系統的な計算を実行するため,計算資源を増強する必要がある.このため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
多数の物質を対象とした計算並びにスクリーニングを実行するためのスーパーコンピュータ使用料および成果発表旅費等として使用する.
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