中間バンド型太陽電池は,次世代の高効率太陽電池として期待されている.しかし,その鍵となる中間バンドを有する光吸収層材料の最適化が十分になされているとは言えず,現状では理論値を遙かに下回る変換効率しか得られていない.本研究では,高効率太陽電池の実現に向け,高精度な第一原理計算に基づいた光吸収層材料の設計と探索を行った. 昨年度に引き続き,不純物添加2元系化合物半導体および3元系化合物半導体を対象に,バンド構造と吸収係数の観点から第一原理計算によるスクリーニングを実行した.精確な理論予測を行うためには,電子構造の高い計算精度が要求される.密度汎関数理論の枠組みでの標準的な近似であるLDAやGGAを用いた第一原理計算では,半導体のバンドギャップや不純物準位の再現性が悪いため,ハートリー-フォック交換項を混合したハイブリッド汎関数を適用した.また,第一原理計算による吸収係数をインプットにした変換効率シミュレーション手法を開発し,これにより各物質の理論変換効率を光吸収層厚さの関数として算出した. 以上の計算手法により,多様な対象に対してスクリーニングを実行することで,高い理論変換効率が得られる物質を絞り込んだ.その結果,従来提案されているような遷移金属元素をドーパントとして添加した2元系化合物半導体のみならず,ドーパントを含まない3元系化合物の中にも理想的なバンド構造を有する物質が存在することが予測された.
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