研究課題/領域番号 |
26630319
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤井 達生 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (10222259)
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研究分担者 |
狩野 旬 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (50375408)
中西 真 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (10284085)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ粒子磁性 / 表面誘起磁性 / 噴霧熱分解法 / ペロブスカイト / 反強磁性体 |
研究実績の概要 |
反強磁性体であるLaFeO3は、ナノ粒子化により非常に大きな磁化を示す。これはナノ粒子の構造がバルク結晶とは異なることに起因していると思われるがその詳細は不明である。そこで本研究では、LaFeO3ナノ粒子の磁化発現機構を解明するとともに、得られた知見をナノ粒子に磁性を付与する手法へと応用し、新規な磁性ナノ粒子を創製することを目的としている。 今年度の研究では、主として噴霧熱分解法を用いて粒子サイズが制御されたLaFeO3ナノ粒子合成することを試みた。試料の合成手順は以下の通りである。原料として化学量論比となるよう秤量した硝酸ランタンおよび硝酸鉄を蒸留水に溶かし、0.01~0.1Mの濃度の異なる原料溶液を調製する。次に調製した原料溶液を霧化器に移し超音波振動により霧化し、それをキャリアガス(空気)と一緒に電気炉内へと導く。そして、電気炉を通り抜けてきたガス中に含まれる微粒子をフィルターにより捕集し、X線回折法及び透過型電子顕微鏡により評価する。 電気炉の中心温度を750~850℃の範囲で変化させ実験した結果、760℃以上でLaFeO3の結晶化が進行し、さらに775℃を超えると、粒子間の焼結、凝集も急激に進行した。よって、最適な焼成温度を775℃と決定し、その時の粒子サイズを測定したところ、一次粒子径が約25nmm二次粒子径が約450nmの球状のLaFeO3ナノ粒子が生成していることが判明した。次に、同じ焼成条件で原料溶液の濃度を変化さたところ、一次粒子径は溶液濃度の減少とともに増加、一方、二次粒子径は減少するという興味深い結果が得られ、ナノ粒子の粒子径を制御することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
噴霧熱分解法により粒子サイズのそろったLaFeO3ナノ粒子が合成できる条件を見出し、また、粒子サイズをコントロールすることにも成功した。すなわち試料合成に関する部分の問題点をほぼ解消することができ、今後は、磁性を中心とした物性評価に研究の主軸を移していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
噴霧熱分解法により合成された粒子サイズが制御されたLaFeO3ナノ粒子について、合成条件をさらに詳細に検討し、粒度分布がよりシャープとなるLaFeO3ナノ粒子の合成に挑戦する。くわえて、これまでに得られた種々のLaFeO3ナノ粒子について、粒子サイズ毎に、ナノ粒子の構造をX線構造解析および高分解能TEM観察により決定し、Fe-O-Feの結合距離や結合角のサイズ依存性を明らかとする。くわえて、各試料について磁化測定を行い、構造と磁性との関係を整理することで、ナノ粒子の構造が磁性に及ぼす影響を解明することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物性を正確に評価するためには、信頼性の高い試料を得ることが不可欠である。このため今年度は、信頼性の高い試料として、形態が制御されシャープな粒度分布を持つLaFeO3ナノ粒子を、再現性良く噴霧熱分解法により合成する合成条件(溶液濃度、霧化量、焼成温度等)を確立することにまず集中した。その結果、ナノ粒子の微細構造解析や物性評価に関連した部分の実験が後回しになっており、それに関連した予算を使用しなかったため残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
LaFeO3ナノ粒子の合成に使用する噴霧熱分解装置を一部改良することで、より粒径分布が揃ったナノ粒子の合成が実現できる予定である。そのための合成装置の改良に残額の一部を使用するとともに、合成されたナノ粒子の微細構造解析および物性測定を、鋭意進めていく予定であり、そのための費用に充当する。
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