研究実績の概要 |
本研究課題の初年度は、最近新しく発見された可視光応答型光触媒効果を有する鉄を含むソーダライムシリケイトガラス(15Na2O・15CaO・(70-x)SiO2・xFe2O3ガラス, 以下xNCSFガラスと略す。)の周辺組成のガラスについて、光触媒効果と物性と構造の相関を、鉄メスバウアー分光法などの放射化学的手法を用いて明らかにすることを目的として研究を行った。 化学組成の探索において、まずxNCFSガラスに酸化アルミニウムを加えた系は可xNCSFガラスよりも高い可視光応答型光触媒効果を持つことが分かった。アルミニウムイオンを主成分とする、いわゆるアルミン酸塩ガラスは可視-赤外領域において高い光透過性を有することで知られている。今回新しく見出された系ではアルミニウムの高い光透過性が、触媒効果に影響したものと思われる。このガラスの熱処理では通常のヘマタイトに加え、内部磁場の大きいものやナノ構造を持つヘマタイトがメスバウアースペクトルから確認された。これらの構造と物性相関解明は今後の課題となる。さらに、ガラスの作成法を熔融法からゾルゲル法に変更してもケイ酸鉄ガラス(xFe2O3・(100-x)SiO2)が作成可能で、この試料も熱処理するとヘマタイトが析出、可視光応答型光触媒効果を示すことが分かった。熔融法で作成したxNCSFガラスは原料の混合物の融点を下げる目的でNa2CO3, CaCO3を添加する必要があったが、ゾルゲル法ではその必要がなく、Na+, Ca2+を含まないため光透過性も向上することから、触媒効果の高い試料を得ることに成功した。 上記のように新たな成分を添加する方法と合成法を変えるという二つの手法によって、従来のxNCSFガラスよりも高い可視光応答型光触媒効果を持つガラスの開発に成功した。これらの研究成果は国内外の学会において発表、学術論文の形で出版された。
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