研究実績の概要 |
光触媒とは照射した光を吸収し有機物分解するなどの作用を有する材料である。1972年に酸化チタンが紫外光照射により光触媒効果を示すことが発表された。紫外光は太陽光スペクトルに数%しか含まれておらず、効率面から太陽光スペクトルに約50%含まれている可視光で活性化する光触媒の研究が近年進められている。当研究室では、可視光領域に吸収波長を持つ酸化鉄に注目し、これをケイ酸塩ガラスに導入した、いわゆるケイ酸鉄ガラスの構造と可視光応答型光触媒特性の相関に関する研究を行ってきた。さらにケイ酸塩ガラスにアルミニウムを導入すると優れた光透過性を示す点に着目し、ケイ酸鉄ガラスにアルミニウムを導入したガラスの構造と光触媒効果の相関に関する研究を実施した。平成27年度は低温で合成が可能であるゾルゲル法で40Fe2O3・xAl2O3・(60-x)SiO2 (以下xFAS, x = 0 ~20 mass %)の組成を持つガラスを作製し、構造解析および可視光照射による光触媒効果の評価を行った。その結果、熱処理をしたxFASのメチレンブルー分解の反応速度定数(k)の値は2.18×10-3 min(0FAS)、2.58×10-3 min(5FAS)となり6.66×10-3min(15FAS)で最大値を示し、アルミニウム濃度の増加による光触媒効果向上の傾向が観測された。また、メスバウアースペクトルからアルミニウム濃度が増加するにつれ、Fe1.833(OH)0.5O2.5の面積強度が増加していることから、Fe1.833(OH)0.5O2.5が光触媒効果に寄与している可能性が示唆された。
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