研究課題/領域番号 |
26630322
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
高橋 雅英 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20288559)
|
研究分担者 |
徳留 靖明 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50613296)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | スマート材料 / 応答性メソ孔 / 除法スイッチ / ゲート制御 |
研究実績の概要 |
溶媒、湿度、温度等の外部刺激に対して応答性を有する機能性材料はこれまでに広く研究されており、次世代のセンシング材料、アクチュエーター、分離媒体等への応用が期待されている。一般的な外部刺激材料では、有機分子の光異性化や相転移をトリガーとして機能性の発現が試みられている。すなわち、利用する分子に固有な特性の変調に伴うプロセスが利用されている。一方で、多層膜界面を効果的に利用し界面における各種物性の僅かな差異により外部刺激応答性が発現されれば、プロセスの一般性は極めて高くなる。すなわち、機能性有機分子を利用することなく広範な材料での外部刺激応答性材料の創出が可能となる。具体的には、ゾル-ゲル手法により多層膜を設計し、異質層界面における応力の蓄積と緩和を制御することにより、マイクロメートルサイズの微細周期構造に可逆的な湿度応答性を発現させた。さらに、周期構造の形成と消失に伴いサイズ選択的な粒子の着脱に成功した。本手法における外部刺激応答性は多層膜の物理的特性の差異に起因しているため、化学的・熱的耐久性が比較的高い無機材料をはじめとした種々の材料群への拡張が可能である。 メソポーラス薄膜におけるメソ孔の構造を外部応力により制御できることを見いだした。圧縮応力に対してはメソ孔が圧縮変形することで応力緩和すること、引っ張り応力に対しては引っ張り方向にメソ孔が伸張することが実験的に示された。数nmの領域の構造が、マクロな変形に対して応答しているという初めても報告であり、基礎科学的に興味深い。また、それだけではなく、メソポーラス材料表面における開口のゲート制御にも利用可能であり、メソポーラス材料の新しい応用を開拓することが大いに期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メソポーラス材料のメソ孔とマクロな変形の関係は明らかになっていなかった。本プロジェクトにより、メソポーラス薄膜におけるメソ孔の構造を外部応力により制御できることを見いだした。圧縮応力に対しては、メソ孔が圧縮変形することで応力緩和すること。引っ張り応力に対しては、引っ張り応力に対しては、引っ張り方向にメソ孔が伸張することが実験的に示された。数nmの領域の構造が、マクロな変形に対して応答しているという初めても報告であり、基礎科学的に興味深い。また、それだけではなく、メソポーラス材料表面における開口のゲート制御にも利用可能であり、メソポーラス材料の新しい応用を開拓することが大いに期待できる。また、本成果は、応答性有機分子を用いることなく、メソ孔のサイズやアスペクト比を変化させることができることを、世界に先駆けて示しており、メソポーラス材料の応用の可能性を大きく広げることが期待できる。特に、ドラッグデリバリーなどの応用では、メソ孔へのゲート形成が大きな課題であり、これまでは種々の応答性有機分子のグラフトにより行われてきた。しかしながら、機能性有機分子の合成、メソ孔への効果的な位置決めによる効率的なグラフトは実質上困難な課題である。本研究の成果を利用すれば、物理的に変形するだけで開口が制御できることになり、機能付与のハードルは大いに低下する。今後、より定量的な評価が必要ではあるが、メソポーラス材料の出口を大きく広げることが期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
ここまでの研究で、外部からの力学刺激により,メソ孔が10%程度編成することを実験的に確認しつつある。より詳細な知見を得るために、測定ジグを工夫し「その場2次元小角散乱」の測定結果を順次収集しつつある。この測定により、メソポーラス有機シリカ薄膜の面内および膜厚方向の構造変化を同時にかつ定量的に検出可能となり、ここまでの実験結果をより深化する事ができる。よって、本年度前半においては、その場二次元小角散乱パターンの解析に全力を挙げる。それと同時に,メソ孔のより大変形を実現するための材料組成探索を並行して進める。本プロジェクトでは、30%程度の変形を最終目標とし、材料設計を行う。球状ミセルが楕円体に変形していると予想している(実験結果もそれを支持している)が、メソ孔形状と良いマッチングを示す異方性形状の有機色素を導入することで、物性の動的制御へと発展する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度は変わる前後における伝票等の締め切りの関係で,研究試薬および実験消耗品の購入が次年度となった事による。
|
次年度使用額の使用計画 |
実験計画通り進めており、次年度使用額に関しては速やかに消費する。
|