昨年までの検討結果から、MgS-P2S5系にMgI2を添加した固体電解質を作製し、MgI2の添加に伴って導電率が増加することがわかった。また様々な組成について検討した結果、P2S5を含まないMgS-MgBr2系において、さらに高い導電率を示すことを見出した。遊星型ボールミル装置を用いたメカノケミカル法によって得られた50MgS・50MgBr2 (mol%)組成の試料のXRDパターンからは、出発物質であるMgSとMgBr2に帰属される回折ピークが観測されたが、全体的にブロード化していた。このものを400℃まで加熱した後、室温まで冷却したところ、MgSとMgBr2のピークに加えて、MgSの硫黄の一部が臭素に置換された化合物と考えられる新たなピークが確認された。熱処理後の試料は200℃で9×10-6 S cm-1の導電率を示し、これまでに報告しているMgS-P2S5-MgI2系ガラスセラミックスの導電率に比べて約2桁高いことがわかった。 硫化物系以外の電解質として、マグネシウム塩としてマグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(Mg(TFSA)2)を添加したP12TFSA柔粘性結晶やポリエチレンカーボネート(PEC)電解質についても検討した。PECにMg(TFSA)2を添加していくと、80 wt%までは、室温で固体状態の電解質を得ることができた。またMg(TFSA)2を添加した電解質のラマン分光分析を行ったところ、743 cm-1に新たなバンドが観測された。これはMg2+が電解質中でキャリアイオンとして存在していることを示唆している。得られた電解質の導電率を交流インピーダンス法により測定した。固体状態の電解質で最も導電率の高い組成はPECにMg(TFSA)2を50 wt%添加したものであり、60oCで2.9×10-6 S cm-1の導電率を示した。
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