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2014 年度 実施状況報告書

ゲル化法と3Dプリンターを用いた精密極微細セラミック部材成形

研究課題

研究課題/領域番号 26630328
研究機関東京農工大学

研究代表者

塚田 まゆみ  東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術専門員 (70376870)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード3Dプリンティング / アルミナスラリー / ゲル化 / 高分子分散剤 / 原子間力顕微鏡 / コロイドプローブ / 粘弾性 / 吸着
研究実績の概要

セラミックス微小部材の精密な極微細構造設計を可能にするため、独自の添加剤を用いた水系ゲルキャスト法と3Dプリンターを組み合わせた、セラミックスの極微細3次元成形法を開発することを目的に、本年度は、細線法に適用可能な高固形分率ペースト状スラリーの調製法を検討した。スラリー作成には、市販のイソブチレンと無水マレイン酸の共重合体をアンモニア処理した添加剤(イソバン、クラレ(株))を、アンモニア処理法の違いにより構造の異なる2種類について、マグネシウムの含有の有無の2種類のサブミクロンアルミナ粉末に適用し、マクロな視点(スラリーのゲル化挙動の観察、 イソバン吸着量評価、動的粘弾性)から測定を行うことで、良好な分散とゲル化進行をもたらすために必要な最適添加量を見出し、マグネシウムの影響を調べた。添加剤の濃度については、飽和吸着量付近の添加で最もゲル化が促進され、未吸着の過剰なイソバンの存在はゲル化を阻害する傾向をもつことを見出した。アミド基を有する添加剤は有さないものより、また、マグネシウムを含むアルミナ粉がより速やかにゲル化を進行させた。
同時にミクロな視点から、コロイドプローブ原子間力顕微鏡法用いて、添加剤の吸着、ゲル化に伴う斥力・引力発現の経時変化を含む挙動の解析を行った。その結果、注入直後の斥力が増加し引力が減少する時間帯(粒子の分散に相当)と、その後の斥力が低下し長距離引力を有する時間帯(ゲル化に相当)が認められ、微視的測定がスラリーの巨視的挙動に対応した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

3Dプリンティングに用いる、セラミックス粉末を分散させた高濃度スラリーを成形後、保形可能にするゲル化機能を有する添加剤として注目した、イソブチレンと無水マレイン酸の共重合体をアンモニア処理した添加剤をサブミクロンアルミナ粉末に適用した際の基本特性(スラリーのゲル化挙動の観察、イソバン吸着量評価、動的粘弾性、コロイドプローブAFM法による微視的な計測)を詳細に調べ、幅広い知見を得た上、当初予定していなかった、原料セラミックス粉末への微量添加金属の影響に関する知見も得ることができた。
スラリーの細線化特性の計測については、シリンジからの押し出しに関し、手動で予備的な試験を行ったに留まり、次年度に本格試験を行う。
コロイドプローブAFM(原子間力顕微鏡)法により、分散過程、および、ゲル化開始段階での粒子間相互作用の変化の計測については、アルミナ粒子のコロイドプローブとサファイヤ平板間の相互作用力の経時変化を添加剤注入後から測定したところ、注入直後の斥力が増加し引力が減少する時間帯(粒子の分散に相当)と、斥力が低下し長距離引力が認められた時間帯(ゲル化に相当)が認められ、微視的測定がスラリーの挙動に一致するという重要な知見を得た。
以上、3Dプリンティングシステムの導入は遅れたものの、使用スラリーの挙動については、初年度に予定していた以上の成果が得られたため、研究はおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

2年度目は、細線法による3Dプリンティングを行うシステムを導入し、初年度に得た最適条件のもとで3D成型を実施し、焼成した成型体の評価を行う。
システムについては、ノズル部を含め市販品では対応しづらいため、既存の自動ステージやコーティングシステムを改良した自作品で対応する。ノズルからの噴出特性については流動性を保持する固形分率の限界(サブミクロンアルミナ粉使用)、流動性を示すレオロジー特性値とノズル透過性、ノズルから射出したゲル積層体の挙動を評価する。
それに基づき、セラミックスラリーの作成、ゲル化条件を3Dプリンティングシステムに適した、流動、固化条件となるよう最適化する。並行して、セラミック粉末や添加剤の種類を変え、3Dプリンティング可能なペースト状スラリー作成の条件を見出す。

次年度使用額が生じた理由

スラリー開発が本3Dプリンティングの要の部分であり、既存技術である3Dプリンティングのために必要なシステムの導入は、研究の2年度目にまわしたため、次年度使用額が比較的多く生じた。その結果、初年度、2年度とも同程度の額にて研究を実施することになっている。

次年度使用額の使用計画

3Dプリンティングのために必要なシステムを導入、および、セラミックスラリーと焼結体の作成・評価に必要な試薬や分析に経費を充てる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] イソブチレン-無水マレイン酸系共重合体によるアルミナ微粒子の水中分散およびゲル化機構の解析2015

    • 著者名/発表者名
      小池菜摘、小熊一樹、島井駿蔵、塚田まゆみ、岡田洋平、神谷秀博
    • 学会等名
      日本セラミックス協会2015年会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-18 – 2015-03-20
  • [学会発表] コロイドプローブAFM 法を用いたアルミナスラリーの分散及びゲル化過程における粒子間力変化の解析2015

    • 著者名/発表者名
      小熊一樹、小池菜摘、島井駿蔵、塚田まゆみ、岡田洋平、神谷秀博
    • 学会等名
      日本セラミックス協会2015年会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-18 – 2015-03-20
  • [学会発表] イソブチレン-無水マレイン酸系重合体によるアルミナ微粒子の水中分散及びゲル化過程の解析2014

    • 著者名/発表者名
      小熊 一樹、小池 菜摘、塚田 まゆみ、島井 駿蔵、神谷 秀博
    • 学会等名
      粉体工学会 2014年度 秋期研究発表会
    • 発表場所
      東京ビッグサイト
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-26

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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