セラミックス微小部材の精密な極微細構造設計を可能にするため、イソブチレンと無水マレイン酸の共重合体を添加剤として用いた水系ゲルキャスト用スラリーの作成法を確立し3Dプリンティング技術と組み合わせることで、セラミックスの極微細3次元成形法を開発することを目的に研究を実施した。3Dプリンティングには細線法を選びそれに適用可能な高固形分率ペースト状スラリーの調製法を検討した。上記添加剤の市販品(イソバン、クラレ(株))から、アンモニア処理法の違いにより2種類の構造と種々の分子量のものを、原料セラミックス粉では、アルミナ粉末について、粒子径(サブミクロン、ナノサイズ)やマグネシウムの含有の有無を組み合わせ、粒子分率や調整後の静置温度を変化させて、マクロな視点(スラリーのゲル化挙動の観察、 イソバン吸着量、粘性、動的粘弾性)の測定で、良好な分散とゲル化進行をもたらすために必要な条件を見出した。飽和吸着量とゲル化特性の考察より、飽和吸着付近で最もゲル化が促進され、未吸着の過剰なイソバンの存在はゲル化を阻害する傾向をもった。また、アミド基を有する添加剤は有さないものより、また、マグネシウムを含むアルミナ粉がより速やかにゲル化を進行させた。ゲル化は静置温度が高いほど速く、粒子径や粒子濃度とゲル化させるために必要な添加剤の分子量や添加量の最適値を求めた。 同時にミクロな視点から、コロイドプローブ原子間力顕微鏡法用いて、添加剤の吸着、ゲル化に伴う斥力・引力発現の経時変化を含む挙動の解析を行った。その結果、注入直後の斥力が増加し引力が減少する段階(粒子の分散に相当)と、その後の斥力が低下し長距離引力を有する段階(ゲル化に相当)が認められ、微視的測定がスラリーの巨視的挙動に対応した。 本知見より、細線化に適用可能なセラミック原料粉末のスラリー化条件の設定手法の確立が達成できた。
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