2枚の亜鉛を平行にエポキシ樹脂に埋め込んだ2電極式タイプのセルを用い、水膜下で亜鉛の電気化学インピーダンス(EIS)を測定し、そのEIS特性が伝送線回路モデルにより説明できることを明らかにした。炭素鋼(昨年度報告)と同様に水膜下での腐食速度をEIS法と伝送線回路解析により決定できることを明らかにした。亜鉛の初期の腐食速度(厚い錆に覆われる前)を異なる厚さの水膜下で同手法により解析した結果、亜鉛の大気腐食速度は水膜厚さに依存して変化し、数10μm程度の厚さで最大値を示すことを明らかにした。これは水膜を通る酸素の拡散速度と金属のアノード溶解速度の相反する水膜厚さ依存性により説明できる。亜鉛の水膜厚さ依存性は昨年度までに得られている炭素鋼のものと同じ傾向であったが、その腐食速度は炭素鋼のものより著しく小さくなった。さらに、実大気環境に暴露した亜鉛電極を用い、腐食速度に及ぼす亜鉛腐食生成物の影響について水膜下でEIS法により調べた。その結果、腐食生成物により亜鉛の腐食速度が著しく抑制されることを明らかにした。さらに腐食速度は水膜厚さに依存しなくなることをはじめて明らかにした。以上のことから、一般大気環境で亜鉛表面に生成する腐食生成物皮膜(酸化亜鉛、水酸化亜鉛、塩基性塩化亜鉛など)は極めて高い保護性を示すことが明らかになった。 以上、水膜下(本実験では、5μm程度までの薄膜まで)でのEIS測定と伝送線回路による解析により、今まで困難であった薄膜水下での電気化学計測が可能になり、その腐食速度を推定できるシステムが完成した。
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