研究課題/領域番号 |
26630334
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤井 英俊 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (00247230)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 接合 / ものづくり / 組織制御 / 配向性制御 / 補修 |
研究実績の概要 |
接合方向自動制御のための予熱装置の開発を行った。Al合金の機械的特性が、200℃程度で急激に低下することを利用して、FSWツールの前方に加熱装置を配置し、ツールの駆動荷重をさらに低下させることを試みた。加熱方法には、(1)通電による加熱、(2)マイクロアークによる加熱、(3)レーザによる加熱、(4)高周波誘導加熱などのいくつかの方法が考えられたが、装置の大型化を避け、コストの大幅な増加を抑制し、できるだけ局所的な加熱とするため、(1)通電による加熱あるいは(2)マイクロアークによる加熱の手法を検討した。その結果、(1)通電による加熱が、本プロセスにより適していることが分かった。 平成26年度で確立した機構により、接合方向およびそれに垂直な2方向のいずれにおいても10kgf以下の拘束力で接合可能な手法を確立したが、予熱装置によって、さらなる荷重の低減が可能となり、上述ののいずれにおいても7kgf以下の拘束力で接合可能となった。また、この手法は、ツールの移動方向(接合方向)を自動的に決定する機構ともなる。すなわち回転ツールの近傍で、特定の方向のみの被接合材の強度が低下すれば、ツールは自動的にそちらへ移動しようとするため、手押し力の低減が可能となるとともに、作業者の意図によって接合方向を決定できるようになる。 また、プロセス条件の最適化を併せて行い、ツール回転速度、移動速度(接合速度)、荷重などの接合条件のパラメータに加え、ショルダとプローブの比率などのツール形状や加熱条件の最適化に取り組んだ。その結果、本研究で掲げる目標を達成するとともに、下側ツールより、プローブを備えた上側ツールの方を低速回転とするのが望ましいことを明らかにした。得られた継手の微細組織や欠陥発生状況、硬度分布、引張強度などの機械的特性に関して調査し、健全性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定を順調にこなすとともに、平成28年度に予定しているマグネシウム合金の接合に対しても、凹凸ツールの開発など、一部先行して研究を進めているから。
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今後の研究の推進方策 |
Mg合金は、Al合金と同様に融点が低く、Al合金に引き続き、実用化が考えられる合金であるが、hcp構造を有するため、加工方向に垂直な面に対してc軸が配向することが知られている。したがって、FSWを施した場合にも、極めて強い集合組織が形成することが予測され、攪拌部(接合部)の組織は母材より微細化されるが、集合組織によって、接合部において破断が生じてしまう。 本研究では、塑性流動のランダム化によりこれを解決する。具体的には、下部ツールに凹部を、上部ツールに凸部をつけることで、ツールの回転方向だけでなく、上下方向への塑性流動を強制的に生じさせる。これにより塑性流動が複雑化し、結果として集合組織も弱まると考えらえる。また、この際、上部ツールに突起があっても継手表面が健全(平ら)であるのと同様に、下部ツールに凹みがあっても、健全(平ら)な継手表面が得られる。
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