研究課題/領域番号 |
26630335
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
節原 裕一 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (80236108)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 反応性プラズマPVD製膜プロセス / 高速製膜 |
研究実績の概要 |
本研究では、従来の反応性スパッタプロセスが抱える課題をブレークスルーするため、ターゲット全面を利用したスパッタ放電制御による高速繰り返し原子層堆積に基づく新しい積層技術を開発し、従来技術における課題であった反応性スパッタ製膜プロセスにおける高効率化と超高速化を両立可能なスパッタ製膜技術の創成に新たな道を拓くことを目的としている。 初年度に当たる本年度は、プラズマ支援スパッタ製膜系において、ターゲット磁場を印加しない場合と印加した場合における放電制御因子の解明に注力して研究を推進した。まず、ターゲット磁場を印加しない場合では、ターゲット前面のプラズマは高周波誘導結合放電で維持され、ターゲットの全面に亘ってほぼ一様なスパッタリングが可能であることを示した。また、ターゲットにマグネトロン磁場配位を印加した状態では、直流パルス電圧を用いたスパッタ放電においても、スパッタ放電に重畳した高周波誘導結合放電における放電電力を高めることにより、プラズマCVD法と同等の高速製膜が可能であることを示した。さらに、気相の高密度化に資する技術として注目されている大電力パルススパッタリング用電源を援用したターゲット放電実験を行い、通常のマグネトロン放電モードから高密度プラズマ生成を示唆する放電モードに遷移する傾向が見られ、反応性制御プロセスに向けた基礎データを得ることができた。一方、ターゲット全面に一様な磁場を形成した磁場配位では、両極性のパルス高電圧を印加した場合でもターゲットのスパッタリングの分布を一様にすることが困難であることを示唆する結果が得られた。さらに、本年度は、反応性スパッタ製膜プロセスとして酸化物半導体薄膜の反応性スパッタ製膜を試み、スパッタ製膜プロセスにおける気相の反応性制御の観点から低温製膜に向けた研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記したように、放電制御因子についてはターゲット磁場の有無と共にターゲット放電生成に用いる電源容量に対する効果についても調べることができ、本年度で計画した研究課題については概ね達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に蓄積した知見をもとに、新たなプラズマ支援スパッタ製膜技術の開発と最適化に向けて、プラズマ支援スパッタ製膜系の高度制御手法の開発と改良を重ね、以下の項目を設定して研究を推進する予定である。a)プロセス制御手法の設計と改良、b)粒子計測ならびに分光計測、c)膜特性評価を通じた開発装置の実用性評価と制御技術最適化。その際、ターゲット周辺構造の改良に加えて、高周波誘導結合放電を重畳した状態でのパルススパッタ放電との相互作用を見据えて、開発を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ターゲットに磁場を印加した際のスパッタリング分布の一様化に向けて、ターゲット周辺構造の改良を要することが明らかとなり、次年度でのプラズマ支援スパッタ製膜技術の開発と最適化に向けた研究に反映させて実施することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の理由に記したように、ターゲットに磁場を印加した際のスパッタリング分布の一様化に向けて、ターゲット周辺構造の改良に使用する計画である。
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