平成28年度は主に以下の項目を実施した。[1]エポキシ樹脂硬化時における湿度処理過程が電気トリー進展に与える影響を評価した。恒温恒湿槽を用いて、複数の温湿度条件下で試料を硬化させ、交流高圧発生装置および針-円板電極によって電気トリー発生実験を実施した。得られた電気トリーは、X線CTによって観察し断層画像の解析を行った。その結果、高湿度処理になるにつれて、電気トリー進展が大きくなることが明らかになった。また、Discharge-Avalancheモデルと計算機シミュレーションに基づき、電気トリー進展時間の解析を行った(IEEE Trans. Dielectr. Electr. Insul. 23 (2016) 2556)。さらに、湿度処理による影響を軽減させることを目的として、無機ナノフィラーの効果を実験的に検証したところ、ナノシリカフィラー(平均粒子径100nm)の導入によって絶縁破壊強さの低下が軽減されることも明らかになった。[2]電気トリーの発生と進展は、絶縁材料内部の空隙の大きさ、形状、分布などの影響を受けるとされている。そこで、内部構造の異なる光硬化性アクリル系樹脂試料を積層造形法によって作製した。このとき、造形方向を変化させることで、同一の大きさを有する試料であっても内部の積層構造(界面)状態の異なる試料を得た。これらの試料に対し、絶縁破壊実験と走査型電子顕微鏡による観察を実施した。その結果、積層方向(厚さ方向積層造形および水平方向積層造形)が絶縁破壊強さと内部の空隙に影響を与えることが明らかになった(平成28年電気学会 基礎・材料・共通部門大会において発表)。
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