研究課題/領域番号 |
26630343
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
細田 秀樹 東京工業大学, 精密工学研究所, 教授 (10251620)
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研究分担者 |
稲邑 朋也 東京工業大学, 精密工学研究所, 准教授 (60361771)
田原 正樹 東京工業大学, 精密工学研究所, 助教 (80610146)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 構造・機能材料 / マルテンサイト変態 / 生体材料 / 超弾性合金 / 低温時効 / 金合金 / 強化機構 |
研究実績の概要 |
26年度は,合金組成として,Au-(49-55)mol%Ti-(17-18)mol%Co多結晶材,Au-55mol%TiおよびCr, Nb, Mo添加AuTiCoをアーク溶解により作製し,溶体化処理温度を900℃,時効として300~400℃で1時間として,生成相,マルテンサイト変態温度,機械的性質を調べた.この結果,まず,Tiが50mol%より多い非化学量論組成にて,化学量論組成より良好な機械的性質を有することが明らかになった.これは本合金の実用化に対し非化学量論組成の利用が有効であることを示すものであり,非化学量論組成の利用が好ましいといえる.時効については,まず,二元系Au-55mol%Ti合金では時効の影響が見られないこと,3元系合金ではTi量によらず時効の影響が見られ,マルテンサイト変態温度が下がること,4元系合金でも時効の影響があることを明らかにした.これらより,本合金の時効挙動については,Co添加により引き起こされる現象であることがわかった.非化学量論組成における第二相としては,構造としてA15 Ti3Auが生成するが,透過型電子顕微鏡観察により,不純物濃度によってはL12構造も出ることが明らかになった.および,電子顕微鏡観察により,析出物は熱処理温度の増加により増加したが,大きさがサブマイクロ~数マイクロメール程度であることがわかり,この寸法であると析出強化のためには大きく,時効による強化が析出強化によるものとは考えにくいことが検証できた.しかし,析出物形成によるマトリクスの組成変動は変態温度に影響を与えている可能性があり,今後,この検討も行っていく.また,AuCuAl合金の時効による強度変化についても検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本合金の研究目的のうち,①時効におよぼす組成については解明し,②また,溶体化温度と時効条件の検討も行った.機構の解明のための,③単結晶による基本的変形挙動の解明については27年度予定とした.⑤拡散対法にて拡散挙動を解析については検討を行っている.⑥また,時効によるナノ自己組織化を高分解能透過型電子顕微鏡観察を行い,マトリクスについては特に明瞭な組織変化がないが,析出物形成については明らかにた.さらに,⑦透過型電子顕微鏡内その場加熱および引張試験については,透過型電子顕微鏡の不調により延期した.顕微鏡の修理は本研究費ですむものではなく,本研究では現状遂行をあきらめた.さらに,⑧本材料の実用化の可能性の解明については,順調に遂行し,27年度に企業も含め実用化を検討することになった.および,⑨他の金合金でも同様の実験を行うについては,AuCuAl系でも検討を行い,時効の影響があることを明らかにした.総合的に本年度の研究状況としては概ね順調に進展しているとした.
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今後の研究の推進方策 |
その場観察のために使用する予定であった透過型電子顕微鏡(CM200)について,導入後20年が経過し,いくつかの部品が故障し,使用できなくなった.その装置用の現有の加熱ホルダ,引張ステージは他の電子顕微鏡では使用できず,このため,加熱・引っ張りその場観察を行うことが装置上できなくなったため,これらについては,他の施設あるいは加熱後,引っ張り後の試験で代用する予定である.単結晶についてはまだ良好な試料が作製できておらず,このため多結晶試料で研究を行っている.単結晶育成については引き続きトライする予定である.それら以外は順調に推移し,特に非化学量論組成で良好な特性が得られたこと,化学量論組成と同様の時効現象が見られたことから,今後,51mol%Ti合金を中心に研究を行っていくこととする.
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