中・低温稼働SOFCのインターコネクトとしてCr2O3耐酸化保護皮膜形成Fe-Cr合金が用いられている。合金は加工性に優れた安価な材料ではあるが,Cr2O3皮膜から電極が受けるCr被毒,酸化の進行に伴う皮膜成長による導電率の低下が問題となる。酸化皮膜の導電率の観点からAl2O3やSiO2が皮膜候補となり得ないため,Cr2O3形成合金を念頭に置いたCr被毒対策としてのコーティングの研究がなされている。しかし,抜本的な解決には至っていない。ところで,金属材料は水素を透過しやすい材料であり,一部の金属は燃料極雰囲気で金属として安定である。このような金属を使用すると,燃料極雰囲気から透過した水素によって空気極雰囲気でも酸化皮膜が形成しない可能性がある。本研究では,銅を試料とし,その実現可能性を明らかにすることを目的とした。 銅(99.99+%,厚さ0.1mm)によってAr-5%H2雰囲気(水素供給側)とArあるいはAr-1%O2雰囲気(検出側)を仕切った。銅を透過し検出側に到達した水素は,Arをキャリアガスとしている場合には,これにAr-21%O2を加え燃焼させ,Ar-1%O2をキャリアガスとしている場合にはそのまま燃焼させ,水に転換し,露点計で水蒸気分圧として測定した。測定は873~1073 Kで行った。 露点の経時変化を測定したところ,キャリアーガスをArからAr-1%O2ガスに替えることで検出される露点が上昇しており,Cuを透過した水素量が増加した。一般に酸化物の水素透過能は金属の水素透過能より低い。Ar-1%O2によりCu上に酸化銅が生成したならば酸化銅によって水素透過は阻害され,透過水素量は低下するはずである。結果はこれと逆の傾向を示している。すなわち,水素透過により金属の高温酸化を抑制し,SOFCインターコネクト材として金属材料を金属のまま使用できる可能性が得られた。
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