研究課題/領域番号 |
26630347
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡本 範彦 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60505692)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 超微細粒多結晶 / 脆性材料 / 集束イオンビーム / 微小寸法試料 / 破壊靭性 / スケールファクター |
研究実績の概要 |
アルミニウムや銅等の延性金属多結晶の強度は,結晶粒径が小さくなるほど高く,試料サイズが小さくなるほど低くなることが広く知られている.転位の運動が困難になるまで結晶粒を微細化する(~数十nm以下)と延性が低下し脆性的な破壊を示す場合があるが,このような超微細粒多結晶(ナノ結晶)金属をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems: 微小電気機械システム)等の構造材料として利用する際,その破壊靭性値はMEMSの設計上極めて重要な因子となるにも関わらず,微小寸法領域におけるサイズ依存性は全く調べられていない.本研究では,微小寸法試料の強度評価装置を応用した破壊靭性評価法を用いて,結晶粒径を超微細化することにより脆化してしまったナノ結晶金属の破壊靭性値の試料サイズ効果を調査することを目的とする. まず,パルス電析法により,数nm~数百nmの粒径を有するナノ結晶銅のバルク板材の作製を試みた.結晶粒微細化のためにパルス状に電圧を印加し,かつ工業的な銅電気精錬時よりも2~10倍高い電流密度で行った.電析させたナノ結晶銅のX線回折および走査電子顕微鏡観察を行い,不純物相が無いこと,および平均結晶粒径が所望のサイズ(3種類)であることを確認した. 破壊靭性値測定には,当初Liuら(Appl. Phys. Lett. 102, 171907 (2013))が開発した微小寸法試料(ダブルカンチレバー型)の破壊靭性値測定法を採用する予定であったが,集束イオンビーム装置を用いた微細加工を試みた結果,当初の予想以上に形状調整および微小切り欠きの導入が困難であることが判明したため,シェブロン型ノッチの入った片持梁型の微小寸法試料により破壊靭性値測定を行うことにした.SiCなどの脆性単結晶材料の破壊靭性値測定を行い,この手法による測定値の妥当性を評価・確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り,初年度(平成26年度)にナノ結晶銅試料の作製および脆性単結晶試料を参照試料として用いた微小寸法試料の破壊靭性測定法が確立できたため,平成27年度に実施するナノ結晶銅試料の破壊靭性測定を遂行することができ,大方の事前準備は整った.
|
今後の研究の推進方策 |
まず,ナノ結晶銅試料の破壊靭性測定を行うために,集束イオンビーム装置を用いた微細加工によりシェブロンノッチを施した片持梁試料を作製する.シェブロンノッチの形状や深さ,圧子接触位置調整などの最適化を行う.さらに,種々のサイズの微小寸法試料の破壊靭性値測定を行い,破壊靭性値のサイズ依存性を調査する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定よりもナノ結晶銅試料の作製が順調に進んだため,使用する高純度金属・薬品が少なくて済み,残額を繰越すことにした.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度予算との合算使用により,集束イオンビームのイオン源を購入する予定である.また,得られた成果を学術会議などで研究発表する際の旅費などにも使用する予定である.
|