平成27年度もCoCrFeNiAl0.3合金の変形挙動について、単結晶を用いて調査を行った。その結果、例えば、引張試験を-180~600℃の温度範囲で実施したところ、巨大な伸びが得られたが、-180℃といった低温でも変形中に変形双晶の活動は認められなかった。一方、TEMにより転位運動のその場観察を実施したところ、転位は極めて平面的に運動していることが観察された。また、荷重軸方位の異なる単結晶試料について圧縮試験を行ったところ、変形挙動はシュミットの法則にしたがうことが確認された。さらに、電子顕微鏡を用いて内部組織を詳細に観察したところ、均質化焼鈍後、室温まで徐冷した同合金には極めて微細な析出物が存在していることが確認された。したがって、同合金における平面的な転位組織は、転位による析出物のせん断と密接に関係することが示唆された。また、CoCrFeNiAl0.3多結晶の変形挙動についても調査を行った。その結果、同合金は通常の圧延再結晶処理でも結晶粒が極めて微細になるとともに、それに伴い、降伏応力が極めて高い値を示した。CoCrFeMnNi合金の単結晶化もFZ法、ブリッジマン法を用いて試みたが、現時点で成功していない。そこで、多結晶を用いた研究を遂行した。その結果、CoCrFeNiAl0.3合金とは異なり、室温以下で双晶がメジャーな変形モードとして活動した。特に、変形その場観察の結果、変形初期から変形双晶が形成されていることが確認された。その原因は、積層欠陥エネルギーがCoCrFeNiAl0.3合金のそれと比べ、低いためである。さらに、CoCrFeMnNi合金の変形挙動も結晶粒径に強く依存し、結晶粒の微細化に伴い、高強度化するとともに、変形双晶の活動頻度も増加した。その原因は、結晶粒が微細で、強度が高い場合、降伏応力が変形双晶の活動に必要な臨界応力を超えるためと考えられる。
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