研究課題/領域番号 |
26630350
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
本多 謙介 山口大学, 理工学研究科, 教授 (60334314)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アモルファスカーボン / 半導体材料 / ナノ粒子 / 光電変換機能 |
研究実績の概要 |
申請者は、2つの異原子を添加したa-Cにより光学ギャップと半導体性を同時にコントロール可能な半導体を生み出してきた。本研究課題は、このa-C半導体をナノ粒子化し、形状制御するためのプラズマ合成法の構築を図る。申請者らは、a-C半導体をプラズマ合成する際、プラズマ中に細孔を有するアルミニウム板を挿入して細孔内部にパワーの高い領域をつくると、細孔内で核が形成し、プラズマ中で核が成長、基板上に直径10 nm程度のナノ粒子が得られることを見出した。平成26年度は、研究の第1段階として、粒径2.0 ~ 10 nmに制御可能な合成条件を探索する。さらに、原料組成により光学ギャップ1.0~2.5 eVかつキャリア密度1013~1019/cm3に制御可能なナノ粒子作製法を確立することを目標とした。 第一に、原料組成比を固定し、光学ギャップ2. 5eV付近でナノ粒子のサイズ制御法の確立をはかった。アルミニウム細孔板のプラズマ中の位置とチャンバー圧力によって、細孔内のプラズマの実効出力を制御可能であり、これによりナノ粒子の成長速度を制御可能であることが判明した。また、アルミニウム細孔板の厚さによりナノ粒子生成時間を制御可能であることが判明した。この3つの合成条件のコントロールにより、ナノ粒子の直径を212~15 nmの範囲で制御に成功した。また、15 nmのナノ粒子の合成時のプラズマ出力の変更により、光学ギャップを2.1~2.7eVに制御可能であった。作成した光学ギャップ2.5 eVのa-C半導体ナノ粒子は、窒素をドープすることでキャリア密度4.2×10の14乗 cm-3のn型半導体として機能し、量子効率1.4%の光電変換機能を示した。 制御目標値(粒子径:2.0 ~ 10 nm、光学ギャップ:1.0 ~ 2.5 eV、キャリア密度:1013~1019/cm3)に近いサイズ、性能の半導体ナノ粒子の作成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[1] 光学ギャップの異なるa-C半導体ナノ粒子のサイズ制御法の確立では、(1)制御目標:a-Cナノ粒子の粒子径,分布幅目標値: 2.0 ~ 10 nmかつ±5%以下の分布幅、さらに、光学ギャップ目標値 : 1.0 ~ 2.5 eV、キャリア密度目標値 :1013~1019/cmに対して、実現したa-C半導体ナノ粒子は、ナノ粒子直径:212~15nm、光学ギャップ:2.1~2.7eV、キャリア密度:4.2×10の14乗cm-3であった。従って、おおむね研究計画通り、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
[1] a-C半導体微粒子の粒子サイズ・光学ギャップによる光触媒活性制御 a-C半導体ナノ粒子によるトルエンの光酸化率目標値: 50%以上 作成した粒子サイズ・光学ギャップの異なるn型a-C半導体ナノ粒子の触媒活性を、気相でトルエンの光酸化分解の反応性で評価する。a-C半導体微粒子をパイレックス製二重管型光反応器の内管外表面に塗布し、気相流通下に反応を追跡するものとする。外部からブラックライトで紫外線照射し、常圧、323Kで反応を行う。トルエン濃度は、0.06 mmol/dm3、水分0または0.025 (モル比)の条件とする。この評価条件は、酸化チタンナノ粒子の触媒活性の評価法と同一のものである。まず、①酸化チタンの光学ギャップに近い、2.5 eVのn型a-C半導体微粒子について反応率を検証し、光触媒活性の高い粒子径に最適化、さらに、②トルエンに対し高い触媒活性を示すa-C半導体の光学ギャップ値を求め, トルエンに対し、高い反応性を有する光学ギャップ・形状の明確化を図る。 [2] 高配列フルカラーナノサイズ変換素子アレイの開発 自己規則的にナノポアが周期配列した構造となる材料にアルミナがある。アルミナをテンプレートとした鋳型合成法により、容易にさまざまな材料でドットアレイ媒体を作製可能である。申請者は、既に、直径40 nmのアルミナ内部にSi添加N-doped a-Cを合成することにより,直径40 nm高さ40 nmのa-SiCドット配列媒体の作製に成功している。直径60 nmの細孔がヘキサゴナルに配列した構造をもつアルミナの内部において青、黄、及び赤色のSi添加a-C微粒子の積層によりpin太陽電池(=フォトダイオード)を作成、青・黄・赤それぞれの光の吸収時に0.5、1.7、及び2.7 Vの電位を発生するナノ光電変換素子が100 nm間隔で配列したアレイを具現化する。
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