研究実績の概要 |
エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)フレーム堆積装置ならびに回転モーターを回転軸上に配置した回転型基材保持機構を組み合わせた装置を新たに製作した。原料にはEDTAの金属塩であるY-EDTA, Er-EDTA, Ce-EDTAを準備した。回転軸上に配置した回転モーターを回転させて、フレームガンを100 mm以上離した所からうつ。超高速回転では、作業者の安全が担保できないことが判明し、比較的高速回転することで、フレームを基材にあてるようにした。 本手法では0.048 g/sの水素流量でフレームを発生させた。この流量から発生する熱量は0.68 kJ/sであり、フレーム中での溶融粒子の飛行時間も1.3 msと一瞬であるため金属酸化物の溶融は難しい。一方でEDTAの熱分解反応に必要な熱量は一粒当り5.30×10-17 kJと低い熱量でありフレーム中での分解も容易に進行した。 本手法では超高速回転ではないため、基材の冷却が基板に与えられた熱を逃がすために複数の異なる冷却剤(空気、低温窒素ガス、液体窒素、水シャワー)や回転治具を用いて酸化物膜の作製を試みた。 EDTAの中心金属イオンにイットリウムイオンを担持させたEDTA・Y・Hを原料にして、回転治具を用いて製膜を行った結果、膜厚が89.1 μm、膜中の2次元気孔率が33.1 %のY2O3膜を作製出来た。この際、製膜終了直後の温度は646 ℃となった。さらに製膜中の熱量を低下させるために、水シャワーを用いて製膜を行った。冷却剤に水を用いてその蒸発熱を利用することで20.89 kJ/sもの熱量を基板から奪うことができる。製膜終了後の温度は453℃とさらに低くなり、膜厚は42.7μm、2次元気孔率も22.8%と最も低い数値となった。
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