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2014 年度 実施状況報告書

パーコレーション現象利用による高性能熱電変換材料の創製

研究課題

研究課題/領域番号 26630366
研究機関大阪大学

研究代表者

勝山 茂  大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00224478)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード熱電変換 / 複合焼結体 / 電気伝導率 / 熱伝導率 / パーコレーション
研究実績の概要

本研究は、電気伝導率および熱伝導率が共に大きい結晶粒と、これらが共に小さい結晶粒から構成される複合焼結体を作製し、パーコレーション現象を利用することによって、熱電変換材料の性能を向上させることを目的とする。平成26年度はSi系熱電変換材料について検討を行った。Bを1at.%添加したSi焼結体の電気伝導率は6×10<sup>4</sup>Sm<sup>-1</sup>(1073K)、熱伝導率は25Wm<sup>-1</sup>K<sup>-1</sup>(1173K)である。一方、SiO<sub>2</sub>ガラスの電気伝導率は1×10<sup>-15</sup>Sm<sup>-1</sup>(298K)、熱伝導率は1Wm<sup>-1</sup>K<sup>-1</sup>(1073K)であり、両者には電気伝導率について約10<sup>19</sup>倍、熱伝導率について25倍の差がある。Bruggemannの有効媒質近似による理論式を用いて試算したところ、パーコレーション現象により性能の向上が得られることが予測された。
アーク溶解により作製したB1at.%添加Siインゴットをメノウ乳鉢で粒径32~63μmの粉末に粉砕し、これに市販のSiO<sub>2</sub>結晶粉末(粒径63μm)を所定の割合で混合してホットプレスで焼結して複合焼結体を得た。X線回折の結果、複合焼結体はSiとSiO<sub>2</sub>の2相から成っていることが確認された。複合焼結体の電気伝導度はSiの体積分率が40%を超えるあたりで急激に増加することが観察されたが、熱伝導率には明確な閾値が確認できなかった。Siの体積分率が40%以上においてSiがパーコレートしていることはSEMによる組織観察でも確認できた。一方、ゼーベック係数については、SiO<sub>2</sub>の含有率が大きい試料が若干大きな値を示したが、明確な傾向は確認されなかった。結果、ZTはSi 80vol.%、SiO<sub>2</sub> 20vol.%の複合体がSiのみから成る焼結体より20%程度大きくなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、高電気伝導および高熱伝導を示す成分と、低電気伝導および低熱伝導を示す成分から成る複合構造を持つ熱電変換材料を作製すること、そしてこの複合体の電気伝導においてパーコレーション現象が観察され、熱電性能の向上が得られるのかどうか調査することである。
平成26年度の研究において、BドープSi粉末と、SiO<sub>2</sub>結晶粉末から成る複合焼結体を作製し、この複合焼結体において明らかにパーコレーション現象が観察された。また、熱電性能についても、Si 80vol.%、SiO<sub>2</sub> 20vol.%の複合焼結体において、Siのみから成る焼結体より性能の向上が見られ、当初の目的が一応達成できた。しかしながら、性能の向上はまだ20%程度にとどまっており、今後更なる性能の向上が必要である。

今後の研究の推進方策

パーコレーション現象を記述するBruggemannの理論式によれば、複合体の電気伝導率σと熱伝導率κの比σ/κは、複合体を構成する各成分のσとκの大きさに差があるほど大きくなる。平成26年度の実験では、低電気伝導度、低熱伝導率成分として粒径約63μmのSiO<sub>2</sub>結晶粉末を用いたが、今後はさらに電気伝導率および熱伝導率が低いナノ粒径のSiO<sub>2</sub>ガラス粉末を用いることを計画している。
また、熱電変換材料の性能の向上にはσ/κの値の向上のほか、ゼーベック係数を上昇させることも必要である。熱電変換材料結晶粒の周囲が薄い絶縁層で覆われた焼結体では、エネルギーフィルタリング効果によりゼーベック係数が上昇することが報告されている。そこで、Si粉末の周囲をSiO<sub>2</sub>ガラスナノ粒子で被覆した粉末を作製し、これを低電気伝導率、低熱伝導率成分として用いることにより、エネルギーフィルタリング効果により更なる性能の向上をはかることを計画している。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額は26年度交付金の1%以下であり、ほぼ計画通りに交付金は使用されたものと考える。

次年度使用額の使用計画

平成27年度も26年度同様、粉末試料の合成および複合焼結体の作製、その熱電特性評価の実験を行っていく計画である。試料作製用として高純度試薬、ホットプレス焼結用カーボンダイス、パンチ棒など、また熱電特性測定用として高純度ガス、熱電対、白金線などの購入を予定している。さらに研究成果発表および情報収集のための出張旅費の支出を予定している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] Development of Permanent Type ZrB2-SiC Ceramics Thermocouple for High-Temperature Molten Metals2014

    • 著者名/発表者名
      S. Katsuyama, K. Katogi, S. Iriyama, M. Suzuki, T. Tanaka, M. Fukui, K. Ano, N. Uesugi, M. Ikegawa
    • 学会等名
      The 5th Australia-China-Japan Joint Symposium on Iron and Steelmaking
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      2014-10-19 – 2014-10-21
  • [図書] 未利用熱エネルギー活用の新展開と【採算性を重視した】熱省エネ新素材・新製品設計/採用のポイント2014

    • 著者名/発表者名
      勝山茂ほか
    • 総ページ数
      785
    • 出版者
      技術情報協会

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公開日: 2016-05-27  

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