研究課題
本研究は、電気伝導率および熱伝導率が共に大きい結晶粒と、これらが共に小さい結晶粒から構成される複合焼結体を作製し、電気伝導のパーコレーション現象を利用することによって、熱電変換材料の性能を向上させることを目的とする。本研究ではSi系熱電変換材料について検討を行った。Bを1at.%添加したSi焼結体の電気伝導率は6×10<sup>4</sup>Sm<sup>-1</sup>(1073K)、熱伝導率は25Wm<sup>-1</sup>K<sup>-1</sup>(1173K)である。一方、SiO2ガラスの電気伝導率は1×10<sup>-15</sup>Sm<sup>-1</sup>(298K)、熱伝導率は1Wm<sup>-1</sup>K<sup>-1</sup>(1073K)であり、両者には電気伝導率について約10<sup>19</sup>倍、熱伝導率について25倍の差がある。Bruggemannによる有効媒質近似による理論式を用いて試算したところ、パーコレーション現象により性能の向上が達成できることが予測された。アーク溶解により作製したB1at.%添加Siインゴットをメノウ乳鉢で粒径32~63ミクロンの粉末に粉砕し、これに市販のSiO2結晶粉末(粒径63ミクロン)を所定の割合で混合してホットプレスで焼結して複合焼結体を得た。X線回折の結果、複合焼結体はSiとSiO2の2相から成っていることが確認された。複合焼結体の電気電伝導率はSiの体積分率が40%を超えるあたりで急激に増加することが観察されたが、熱伝導率には明確な閾値が確認できなかった。Siの体積分率が40%以上においてSi結晶粒がパーコレートしていることはSEM観察でも確認できた。結果、無次元性能指数ZTはSi 80Vol.%、SiO2 20Vol.%の複合体がSiのみから成る焼結体よりも20%程度大きくなった。
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日本熱電学会誌
巻: 12 ページ: 25-29
Journal of Electronic Materials
巻: 44 ページ: 2946-2952
10.1007/s11664-015-3784-7