研究課題/領域番号 |
26630367
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三浦 秀士 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30117254)
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研究分担者 |
津守 不二夫 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10343237)
徐 楊 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (60648559) [辞退]
長田 稔子 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90452812)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レーザフォーミング / スーパーアロイ / 一方向組織制御 / 機械的性質 / 異方性 |
研究実績の概要 |
原料粉末ならびにその供給方法に関して、これまでの著書らの研究から大出力のレーザ照射でTi系粉末を溶融・結合・凝固させる場合、溶融に伴う球状化や隣粉の取り込み等による空隙の生成、および造形体表面の荒れが積層粉末の一層厚さによっても大いに異なることを見出していることから、本研究で対象とするスーパーアロイ(インコネル718)粉末に対しても以下の実験を試みた。まず現有装備のファイバレーザ(300W)装置(ビームプロファイルがシングルモードであることからエネルギ分布が等方的であり、ビーム径も30μmに絞れ、粒子接合に最適)により、長さ40mm、厚さ2.0mm、平行部22.5mmの小型試験片を造形し、造形体密度・精度の向上に向けた粉末供給条件(粒度や分布、積層厚さ等)ならびにレーザ照射条件(出力、周波数、走査速度等)の検討を行い、設備備品費として計上している非接触型の3次元形状計測により精密かつ健全な高密度造形体を得るための造形条件について調査検討をした。 次いで、得られた造形体の機械的性質(引張試験ならびに疲労試験)も調査するが、緻密化に際して粉末積層厚さが大きく影響を及ぼすことから、積層厚さ100~250μと変化させての構造・組織観察と合わせて、溶製材と同等の機械的特性を発現できる造形条件としては、一層厚さが100μmのとき真密度に近い(相対密としては99%以上)ものを得ることができた。なお、粉末積層方向、すなわち下から上方に向けて大きく結晶が発達(柱状晶の如く)することから、積層方向とは垂直方向の機械的特性も調査することで、静的および動的破壊強度の異方性の有無についても調査し、予想通り異方性があることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ti系(Ti-6Al-4V)およびスーパーアロイ(インコネル718)の両合金のレーザによる粉末積層造形体に関し、真密度に近くて溶製材並みの静的・動的強度を有するための照射条件等を確立することができたが、最も重要なパラメータは積層厚さであり、表面粗さと関連するが、できる限り薄いのが望まれることを初めて明らかにした.また造形体の積層方向とその垂直方向では力学的特性に異方性が生じ、積層方向での特性が垂直方向に対し、強度・延性ともに劣り、未溶融部らしき欠陥の存在が要因であることを指摘した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、造形体における力学異方性のさらなる原因追究だけでなく、高性能化、とりわけセラミックスへの適用に向けた検討も行う。 例えば、複雑形状部品中のある箇所に磁性や耐摩耗性、耐食性等を持たせたいという、いわゆる高機能化も本レーザフォーミングでは可能であることを実証するため、真空雰囲気でしか取り扱いが困難なTi系の粉末(特に生体適合性や強度に優れるTi-6Al-4Nb合金粉)を用いて、人工骨への適用を想定して、骨芽細胞の侵入に容易な多孔質で強度もある構造体は作製可能であることから、例えば関節部には耐摩耗性を持たせるため窒素雰囲気中でのレーザ照射によるTiNへの変換、すなわちセラミックスを被覆して機能性を高めたり、表層部は緻密化しており順次、内部に向かって空隙率が増えていくような多孔質の傾斜化(逆も)などにも挑戦する。また、鋼種が異なるとレーザ吸収能も異なり、溶融・結合・凝固状況ならびに収縮挙動の違いによる寸法変化や変形等も生じることから、セラミックス粉末(例としてSic)に対しても検討を行い、金属のみならずセラミックスに関するレーザフォーミングの基本特性も明らかにしたい。
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