研究課題/領域番号 |
26630379
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
栗田 典明 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20242901)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 同位体効果 / プロトン / デューテロン / 同位体分離 / シミュレーション / カルシウムジルコネート / ストロンチウムジルコネート |
研究実績の概要 |
H26年度に引き続き、高温作動型酸化物プロトン導電体である、インジウムをドープしたカルシウムジルコネートを水素およびその同位体分離用の電気化学的ポンプとして用いた。ガス供給側に水素あるいは重水素のいずれかのガスを所定の流量で流し、一方、ガス透過側には、四重極質量分析計を設置し電気化学的に透過する水素あるいは重水素の分析を行った。初年度は主に一定電圧を印可してプロトンとデューテロンの透過特性の違いの確認を行ったが、本年度は主に電圧や印可パターンを様々に変化させることでその透過特性の違いの確認を行った。様々な実験より、プロトンとデューテロンがプロトン伝導性固体電解質を透過してくる比は、印可電圧や電圧印可パターンにより依存して変化することが明らかになった。 一方、印可電圧や電圧印可パターンによりプロトンとデューテロンの透過比率が変化することがわかったので、理論的アプローチのベースとするための計算機シミュレーションの構築もおこなった。特にプロトンとデューテロンによる移動特性評価は余り行われておらず学術的にもシミュレーション手法の構築は意義のあることと考える。基礎的なシミュレーションプログラムにより検討した結果、高温酸化物プロトン導電性固体電解質には、一般にプロトンだけでなく、酸化物イオンや正孔伝導の存在が知られている。これらの電荷担体の存在がプロトンやデューテロンの移動に大きな影響があること判ってきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H27年度の計画では、様々な印可電圧や電圧印可パターンをプロトン伝導性固体電解質に適用し、より詳細な実験データを収集する予定であったが、実験的な問題が生じて、系統的な依存性を明らかにするための十分なデータ収集の測定が出来なかった。しかしながら、印可電圧や印可パターンなどの違いにより、プロトンとデューテロンの透過比率に対し、明確な依存性が観察されたのは確認できた。そのため、計算機シミュレーションによる検討に比重を移し、プロトン伝導性固体電解質中のプロトンとデューテロンの移動特性の再現に注力した。しかしながら、当初、想定していた以上に酸化物イオン伝導や正孔伝導の寄与が大きいことが明らかになってきた。そのため、シミュレーションの初期条件や境界条件等の設定の検討が十分に行えなかった。その点は、最終H28年度の最重要検討項目と考えている。また、本研究とは別に行っている同位体効果の実験よりプロトンとデューテロンの電極反応においても十分な検討が必要であることが徐々に明らかになってきている。この点を合わせてH28年度では検討する必要があると考える。そのため、当初の計画よりやや遅れているが、H28年度は、その点を考慮して実験を進めていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
H28年度は、前年度の知見に基づいて、主にプロトンとデューテロンの電極反応における特性の違いを明確にすること、電極反応特性を取り込んだプロトンとデューテロンの移動シミュレーションの完成を目指す。さらにその知見をベースとして実験的にもプロトンとデューテロンの分離への応用の可能性の検討を行う。 具体的には、電極反応特性の違いにおいてはサイクリックボルタモグラムの手法を用いる。その方法により電極におけるプロトンとデューテロンの反応性(それぞれの最適な印可電圧や電極反応速度など)の違いを明らかにする。さらにH27年度においては計算機シミュレーションを行う際の初期条件や境界条件の検討がまだ十分ではなく、この点の詳細な検討を行うと共に、電極反応特性の違いもシミュレーション中に取り込む事を試みる。それらの知見をベースとして実験の条件に取り込み、最終的に、プロトン伝導性固体電解質を用いた同位体分離の可能性を探る。
|