本申請研究では,ポストリチウムイオン電池の開発という位置づけで,マグネシウムなどの多価金属を負極に用いた二塩蓄電池という全く新しい蓄電池の概念を提案した.一般に多価金属イオンを挿入できる正極材料は稀にしか存在しない(マグネシウム系ではシェブレル化合物のみである)ので,電池系の多様性が極めて少ない.ここで提案する二塩蓄電池,二液蓄電池に共通する概念は,二種類の金属カチオンをキャリアとして働かせることにある.二塩蓄電池においては,リチウム電池やナトリウム電池で既に確立されている正極と多価金属を組み合わせて新型の電池系を提案し,二液蓄電池においてはレドックスフロー電池よりもはるかに安定した電池を提案する.これにより元素戦略,大型エネルギー蓄電,出力密度などの問題をクリアできる. 申請者は,リチウム電池用正極とマグネシウム負極を用いたダニエル型の二塩蓄電池を提案し,安定に充放電ができることを示してきた.しかしこのダニエル型では,両方のカチオンを電解液中に含む必要があるため,エネルギー密度が上がらない.そこで,電解質を高い濃度で含み電解液は少量であるような沈殿型電解液を試作して充放電試験を行うことを試みたが,現状はまだ正常に充放電はできていない状況であるので,今後の改良を必要とする.また,本研究ではシェブレル化合物がリチウムもマグネシウムも両方吸収できることを利用した二塩蓄電池の開発も行った.この場合は,電解液の種類にも依存するが,両方のカチオンを同時に収容できることが明らかとなった.以上の結果により,二塩蓄電池の可能性を示唆することができた.
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