研究課題/領域番号 |
26630383
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
鷺坂 将伸 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (60374815)
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研究分担者 |
濱田 茂樹 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (90418608)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ドライクリーニング / 超臨界二酸化炭素 / マイクロエマルション / 酵素 |
研究実績の概要 |
本研究では,2年間で家庭用洗濯と同等の洗浄率をもつ超臨界CO2クリーニング技術を達成させることを目的とし、26年度の前半では、[1]水/CO2分散系における温度、水の量、汚染布/CO2量比の最適条件の探索、後半では[2]界面活性剤およびタンパク質分解酵素を含む水/CO2分散系洗浄の最適化を行うことを予定した。 [1]について、まず、水/超臨界CO2中で界面張力低下作用、そして水の可溶化や分散に貢献すると考えられる種々の界面活性剤を17mM加え、湿式人工汚染布10枚を高圧装置の中に入れ、超臨界CO2(温度55℃、圧力300 bar)または液体CO2(温度26~28℃、圧力140 bar)下、洗浄時間60 min、すすぎ時間200 min、すすぎ流速4 ml/min、撹拌速度825 rpmで洗浄実験を行った。 界面活性剤添加系では、界面活性剤に対する水のモル比W値を0から35まで増加させる事で洗浄率が向上した。W=35の条件で、イソラウリル基とPOE鎖をもつノニオン界面活性剤TMN-3 の場合、超臨界CO2のみの場合と比較して洗浄率が3%増加した。また、オキシエチレン鎖の短い方が良好な洗浄効果を与えた。超臨界CO2溶媒系での油性汚れの洗浄性能は一般の洗濯機および洗剤を使用した水溶媒洗浄の場合よりも優れることも確認された。しかし、タンパク質汚れを含む複合的な衣類汚れ全体に対する洗浄性能は実用レベルには遠く、さらなる研究が必要であることがわかった。 次に、水/CO2分散系洗浄技術用のタンパク質分解酵素として、酸性で活性を保つペプシンを用いて、W/CO2系のモデルケースとして塩酸水(pH=3)/ヘプタン分散系を採用し、洗浄実験を行った。残念ながら、タンパク質の分解にペプシンの有効な効果が認められておらず、酵素と界面活性剤の相性、温度など洗浄条件のさらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
界面活性剤の添加による洗浄率の向上は確認された。しかし、油脂類に対して家庭用洗濯以上の十分な洗浄効果が得られているが、タンパク質汚れに対しては家庭用洗濯に比べてまだ大きな差がある。これは、利用する界面活性剤と酵素の相性がまだ最適化されていないため、そして洗浄装置・方法の最適化が達成されていないためであり、これが達成されれば、タンパク質に対しても大きな洗浄効果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、26年度に引き続き,一般家庭洗濯と同等の洗浄率を達成する[2]界面活性剤/酵素の最適なカップリングを探索する。また,申請書の段階では、超臨界CO2中への水の分散に電気毛管乳化法を採用し,水/CO2分散系連続流通式洗浄装置の開発と洗浄条件の最適化を行うことを予定していたが、高電圧をかける電気毛管乳化法では、酵素を失活させると考えられるため、以下の研究「水/CO2分散系リサイクル洗浄システムの構築」に変更する。これは、低圧条件でも析出しない高CO2溶解性界面活性剤を利用し、洗浄廃液となった水/CO2分散系に対し低圧処理・汚れ成分の分離を行い、再度洗濯に利用するリサイクル洗浄システムである。このシステムを構築できれば、タンパク質の洗浄率を高める酵素技術は生かされ、かつ使用する界面活性剤や水の量も低く制限できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額は少額であり、無理をして使い切るよりは、次年度に繰り越して利用する方が良いと判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
少額であり、物品費として利用する。
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