研究課題
本研究では,家庭用洗濯と同等の洗浄率をもつ超臨界CO2クリーニング技術を達成させることを目的とし、H27年度では界面活性剤およびタンパク質分解酵素を含む水/CO2分散系洗浄の最適化を行うことを予定した。H26年度では、水/CO2分散系洗浄技術用のタンパク質分解酵素として酸性で活性を保つペプシンを選択し、W/CO2分散系のモデルケースとして塩酸水(pH=3)/ヘプタン分散系を、界面活性剤には、アニオン性のスルホン酸ナトリウムを親水基にもつAerosol-OTを利用して、洗浄実験を行った。残念ながら、この場合、タンパク質の分解にペプシンがうまく機能しておらず、界面活性剤の親水基が悪影響を及ぼしていることが推測された。そこで、酵素に影響の少ないノニオン性でかつ高いCO2溶解性をもつ界面活性剤の開発を進めた。ノニオン性親水基としてよく利用されるポリオキシエチレン基は、CO2中における溶解度を大きく低下させてしまい、W/CO2分散系洗浄に利用した場合、衣服に残留し、洗浄率を悪くしてしまった。そこで、超臨界CO2系で水の分散に最も効果的・効率的であったアニオン性ハイブリッド界面活性剤の構造に着目し、アニオン性親水基を無くしたフッ化炭素―炭化水素ハイブリッド化合物を種々合成し、超臨界CO2中での水の分散能力、溶解挙動を検討した。その結果、驚くべきことに、一般的には界面活性剤とは言えないこの化合物が、水の分散に機能し、しかも臨界点近くの非常に低い圧力からW/CO2分散系を安定化させた。ここで開発されたハイブリッド化合物は、ノニオン性で非常に高いCO2溶解性を持ち、衣類との相互作用も弱いと判断されることから、宇宙ステーションにおけるドライクリーニング用のW/CO2分散系安定化剤として最良と考えられる。現在、このハイブリッド会合物とペプシンを利用した洗浄試験を繰り返しており、条件の最適化を進めている。
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