研究課題
液中の粒子の検出には光散乱式の粒子カウンタ(OPC)が広く用いられている。しかし、粒子がナノサイズになると、散乱光強度が微弱になり、粒子の検出が困難になる。気体中のナノ粒子計測には、ナノ粒子表面にアルコール蒸気を凝縮させ、光学的に検出可能なサイズまで粒子成長させる、凝縮核計数器(CPC)が用いられる。しかし、液中のナノ粒子検出には有効な手法がない。本研究では、CPCと同様の原理で、過飽和溶液中の微粒子への溶質成分の核生成を利用することで、新たな液中ナノ粒子検出装置を開発することを目指した。本研究では、溶質成分に塩化カリウムKClを用い、粒径0.3ミクロンのPSL標準粒子の成長と検出を試みた。温度40℃一定に維持したKCl飽和溶液を、ポンプを用いて経路内に循環させ、そこに粒径0.3ミクロンのPSL粒子の懸濁液をシリンジポンプによって導入した。温度を下げると、溶液は過飽和状態となり、核成長管において、不均一核生成によって粒子表面にKClが析出して成長する。実験では、核成長管の長さを変えて滞留時間を12 sと80 sに変化させ、冷却温度を変えて、過飽和度に対する粒子個数濃度変化を測定した。滞留時間80 sにおいて、過飽和度が1.005から1.010の範囲で微小粒子個数の減少と、それに伴う粗大粒子の増加が確認でき、導入した0.3ミクロンのPSL粒子が不均一核生成により、0.5ミクロン以上に成長することが明らかとなった。層流型の成長管を用いてKClの不均一核生成による0.3ミクロンPSL粒子の成長を実証できた。これは粒子の不均一核生成による液中ナノ粒子検出の第一歩と言える。
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