研究課題/領域番号 |
26630390
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐野 紀彰 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70295749)
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研究分担者 |
田門 肇 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30111933)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 誘電泳動 / カーボンナノチューブ / 粒子分離 |
研究実績の概要 |
カーボンナノチューブを合成したステンレス電極を使用して誘電泳動により液体中に分散した微粒子の分離を行う方法の開発をする研究である。カーボンナノチューブを合成した電極を使用することは新規であり、電界がカーボンナノチューブに集中することから、通常の誘電泳動では捕集できないほど小さい粒子を捕集することが可能である。本研究では、実際にカーボンナノチューブを合成して誘電泳動の実験をする他、電界計算による理論的な検討も行っており、カーボンナノチューブを使用したときに起こる特有の粒子分離特性を明らかにした。 実験では、ステンレス金網電極の表面にカーボンナノチューブを合成し、その電極を積層した型(金網電極積層型分離装置)とステンレス平板にカーボンナノチューブを合成した型(平板電極型分離装置)を比較した。ここでは、二酸化チタンと二酸化ケイ素の微粒子の混合分散液(分散媒はエタノール)から二酸化チタンを選択的に捕集することを目的とする分離実験を行った。結果として、平板電極式分離装置でのみ選択的分離が起こった。この結果を説明するために電界計算による理論的検討が有用である。 電界計算による理論的検討では、2次元モデルを使用し、カーボンナノチューブが基板から垂直に配向しているとして計算を行った。この計算では、カーボンナノチューブの直径、間隔、粒子の大きさなどをパラメータとしてそれらの影響を検討した。計算結果から、カーボンナノチューブ電極に特有の粒子分離特性として、カーボンナノチューブとほぼ同じ径をもつ粒子を特に強く引きつけるという性質が明らかになった。この性質は他の電極では見られない性質である。また、比較的大きな粒子をできるだけ多く捕集しようとすると、直径の大きなカーボンナノチューブを合成すべきであることがわかった。今後、これらの性質を実験で証明するするための実験を追加する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
26年度の計画では、メッキを利用したカーボンナノチューブパターニング電極を用いた誘電泳動実験が主な課題であった。また、27年度の計画では(1)電界計算による理論的検討、(2)カーボンナノチューブパターニング電極の最適化、の2項目が主な課題であった。 26年度では、メッキを利用したカーボンナノチューブパターニング電極をつくり、粒子分離実験を行うことには成功した。しかしながら、金網積層型分離装置や平板電極型分離装置など、当初の予定では考えが及ばなかった実験に次々と成功し、予想外の知見を得ることができた。したがって、当初に予定していた計画を詳細に検討することはできなかったものの、目的とするカーボンナノチューブ電極を用いた誘電泳動による微粒子分離の方法の開発に向けては大きな進歩があった。さらに、27年度に予定していた電界計算による理論的検討が実験結果を説明するために必要となり、実際に行ってみた結果、カーボンナノチューブ電極ならではの粒子分離特性を見出すことに成功した。 以上の結果より、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、再度カーボンナノチューブパターニング電極に関心を向け、実験的検討および電界計算を使用した理論的検討を行う。また、平板電極型分離装置との比較も行い、最適な電極形状に関する考察を行う。 26年度では、カーボンナノチューブを合成するときにその直径の制御にまだ成功していない。26年度ではカーボンナノチューブの直径により選択的につよく引きつけられる粒子の直径が決まるので、カーボンナノチューブの直径を変化させた実験を行うことによりこの性質を実験的に証明することが重要である。 さらに多くの種類の粒子を使用した分離実験を行う必要がある。
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