研究課題
金属資源のリサイクルや未利用資源から金属を分離回収するために、低コストで環境負荷の小さい技術として、微生物を用いる方法が注目されている。我々は、培養によって無限に複製することが可能な大腸菌の希土類金属の吸着剤として利用を検討した。その結果、金属の吸着性がpHによりコントロール可能で、抽出剤を用いた溶媒抽出法と同様、一連の希土類金属に特有の選択性を示すことが明らかとなった。さらにこの吸着が、大腸菌外膜表面のリン酸基、カルボキシル基による吸着であることを、化学的、分光学的に証明した。細胞表面での吸着は、数分以内に平衡に達し、実用面で有利である一方、その能力は微生物の表面特性に支配されるため,金属に適した微生物の探索が必要となる。そこで、我々は、大腸菌の外膜タンパク質を足場として、希土類高選択的官能基を細胞表面に提示した、迅速かつ高選択的金属の分離剤の開発を行った。外膜タンパク質に希土類金属認識能力を有するペプチド(His)7を遺伝子工学的手法により導入し、細胞表面が、官能基と金属の親和性とともに、サイズ認識効果をもたらすような表層設計を行った。しかしながら、遺伝子工学的に導入したペプチドの官能基以上に、周囲のアミノ基およびカルボキシル基が多数存在し、希土類金属に対する抽出能力は、わずかに増加するものの選択性の大幅な改善は見られなかった。そこで、さらに、細胞表面に数多くある反応活性部位を利用した希土類選択的官能基の化学的導入を試みた。つまり、大腸菌を人工的に化学修飾することで、その機能強化を試みた。その結果、大腸菌表層に、希土類金属に高い親和性を有するジグリコールアミド型(DODGA)の官能基を導入することによって、希土類金属への選択性が大きく向上することが明らかとなった。さらに、官能基の導入によって、吸着能力も従来の大腸菌に比べ、2倍以上に向上した。
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