申請者が開発しているミストCVDは、最近の研究でライデンフロスト状液滴による「超マイグレーション」により基板全面に亘り均質かつ原子レベルで高品質な機能薄膜の作製が出来る技術である事がわかってきた。この技術を応用し、「立体物」へ均質かつ高品質な機能薄膜を作製できる技術の開発を行うため、ライデンフロスト状態にある数μm径の液滴の挙動解析を行う事が本研究の目的である。 微小液滴(大きさ:数μ程度、速度:数m/s程度)は大気圧下で不安定で熱等の外乱により容易に動いてしまうため、単純に観測が困難である。一昨年度それを観測する為に試作した装置を導入した。本試作装置は、加熱機構を有し、ミストが流れる流路内部を外部から観測することができ、顕微鏡用の対物レンズ(×50)を近づけることができるという条件を満たす必要がある。一昨年度の実験結果から、昨年度はカメラの固定方法や装置の加工精度等、実験系の構成の改善を行った。流路幅1 mmを実現させるために平板を切った物を利用していたが切断面が切りっぱなしで凹凸が激しかったため研磨する等切断面の加工精度を向上させた。また、流路幅1 mmでは流れている流体への圧力損失が大きいのではないかと考えられたため流路幅10 mmに対応した部材も利用できるように改良した。その他、必要な機材として、流量計や超音波噴霧器など調整・調達した。改善した装置を用いて数m/sで移動する数μm径の液滴の挙動の撮影に成功した。液滴サイズが、撮影位置や装置温度に対しどのように依存しているか計測している。 一方、レンズの焦点深度のため、液滴径を特定することが難しいことが分かった。また特殊な構造に加え予算の都合もあり現行装置ではガス漏れが生じており、ミストが上手く流炉内を通過していないことが判明した。これらの結果を踏まえ改善策を思案した。 これらの成果の一部は、日本機械学会等で発表した。
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