本研究では、キャッスルマンの理論を基に外殻軌道が白金族と似ており同等の触媒性能を持つと仮定した炭化鉄を用いて、安価で持続供給可能な触媒の開発を行った。 活性試験前に行う高温耐久処理の変更による触媒への影響を、処理温度を700℃、800℃、900℃と変えて活性試験を行い確かめた。触媒は粉触媒を用いた。T90(浄化率90%時の温度)としたとき、700℃高温耐久処理では活性の劣化差が高温耐久処理無と比べT90において19℃上がった。700℃と800℃の活性はおおむね等しく、900℃においてはT90が150℃上がり、本研究の触媒は900℃において劣化することが分かった。耐久性をみるために、700℃の高温耐久処理後に4回繰り返し活性試験を行ったところ、NOx浄化は1回目と2回目の間に触媒劣化が見られるもののその後の劣化はなく、CO浄化は2回目以降に活性が向上し、その後の変化はなかった。これにより繰り返し耐性があると分かった。また、自動車排ガス浄化触媒に通常担持される白金1.0wt%を同じ担体に担持したところ、同等の活性性能を持った。標準触媒より貴金属6割以上削減させ、値段試算を行ったところ標準触媒299.9円と比べ125.4円と、標準触媒の約4割の値段となった。 実用化に向けて、通電加熱アルマイト担体への担持法の確立を行った。自動車排ガス規制強化により、エンジン始動直後、コールドスタート時の浄化が求められている。コールドスタート対策として、基盤の芯部に抵抗体を有し、通電により触媒全体を瞬時に適温にさせる通電加熱アルマイト担体を用いることとした。セリウム、鉄、マンガンの順に安価な有機化合物を使用した溶液に含浸し、炭素はCO分解処理を用いて担持させた。最後に貴金属として白金を真空含浸により少量担持した。鉄およびマンガン溶液の濃度、pHによる最適担持、白金の真空含浸による有用性を検討した。
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